研究課題/領域番号 |
15K09608
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
松石 豊次郎 久留米大学, 付置研究所, 教授 (60157237)
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研究分担者 |
高橋 知之 久留米大学, 医学部, 准教授 (20332687)
御船 弘治 久留米大学, 医学部, 准教授 (70174117)
山下 裕史朗 久留米大学, 医学部, 教授 (90211630)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レット症候群 / SHANK3遺伝子 / ES細胞 / iPS細胞 / モデル動物 / 不整脈 / 心臓分化 / グレリン |
研究実績の概要 |
・レット症候群(RTT)は発達障害の代表疾患で、自閉傾向、知的障害、突然死など多彩な症状を示すが病態は不明で有効な治療法は無い。原因遺伝子として、MECP2遺伝子が発見されたが、約1割の典型例で遺伝子は発見されていない。次世代シーケンサを用いた遺伝子解析によりSHANK3 遺伝子変異が原因遺伝子の一つである事を報告した。(Am J Med GenetPart A, 2015)。現在、フォロー中のRTT 患者70 人のうち、MECP2 変異のない残り8人についても両親を含めた解析を進め、新たな遺伝子変異を発見したので報告予定である。 ・ヒトRTT 患者のiPS 細胞の樹立:典型的なRTT のphenotype を示すT158M 患者および最も軽症で有意語を話すR133C でのiPS細胞の確立を開始した。現在、1例で確立し、更に4例でのiPS細胞樹立を進めている。近いうちに基礎研究で応用予定である。 ・モデル動物のES 細胞を用いたRTT 患者の突然死の病態解明:6 および8 週目のRTT モデルマウスにおいて、心臓の生理機能や構造の維持に関わる転写因子、構造分子、チャネル分子などを解析し、30 種類の遺伝子のうち4 遺伝子がRTT モデルマウスの心臓で高くなる傾向が認められ、6 遺伝子の発現が低くなる傾向を認めたMeCP2 欠損により心臓における遺伝子発現が変化し、MeCP2 は成体マウスの心臓で遺伝子発現制御に関わる可能性が示された。心エコーによる心機能評価では、QT 延長などの不整脈が認められ、RTT モデルマウスの心臓では、コントロールのマウスに比較して、心臓の構造や機能を保つ幾つかの遺伝子の発現が有為に変化する遺伝子が認められ報告した(Scientific Reports 2015。 ・グレリンによる治験を4例で開始し、神経症状の改善が確認され、治療薬開発を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4つのオリジナルな研究を計画に盛り込み申請したが、SHANK3遺伝子が、レット症候群(RTT)の原因遺伝子であることを初めて証明し報告した。更に、HDAC8遺伝子異常により、RTT様の症状を示す事を発見し、報告準備中である。更に、1例のヒトRTT患者さんからiPS細胞の樹立も確立できた。現在、新たに4例で樹立の準備中である。RTTの突然死の原因は不明であったが、モデル動物を用いて調べ、MECP2遺伝子が心臓の発生、分化に重要な役割を果たしている事を証明した。有効な治療法のないヒトRTT4例において、グレリンの有効性を証明し、新規治療の可能性を示し、特許を取得した。
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今後の研究の推進方策 |
次世代シークエンサーを用いて、MECP2遺伝子変異が無い約1割の患者の遺伝子検索を進める。 iPS細胞の樹立は、典型例のT158M遺伝子変異、軽症型のR133Cなどで3例ずつ、合計6例で確立する。また、心電図でのQT延長などの不整脈がある患者さんのiPS細胞も3例で樹立し、基礎研究を更に進める。ヒトRTTにおけるグレリン治療の開発は、Pmdaに相談し、多施設共同の第II相試験を進める。
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