研究実績の概要 |
レット症候群(RTT)は発達障害病態解明の鍵となる疾患で、知的障害、成長障害、自律神経障害、睡眠障害、肺炎、突然死など多彩な症状を示すが病態は不明で未だ有効な治療法はない。本研究では、モデル動物、ES細胞、iPS細胞、およびRTT患者のiPS細胞を用いて、基礎的・臨床的に1.病態解明、2.バイオマーカー確立、3.新規治療法開発を行つた。既にヒトRTTのiPS細胞は、Methyl CpG binding protein2遺伝子のT158M変異患者3例(典型例)、およびR133C遺伝子変異患者3名(軽症例)で確立し、病態解明の基盤形成を開始した。現在治療法の無いRTT患児・者でのグレリンへの有効性に関する臨床的研究を開始し、ジストニア、振戦などの錐体外路徴候、自律神経症状への効果は認められたが機序が不明の為、基礎研究を行い、トランスレーショナルリサーチへの基盤研究を展開中である。レット症候群における原因不明群の遺伝子解明では、HDAC8遺伝子変異でおこった、世界初のRTT患者を発見し報告した。更に、STXBP1遺伝子変異で、West症候群をおこさずに典型RTTになった患者を報告した(共に2018, Brain Dev,印刷中)。グレリンを用いたパイロット研究を行い、レット症候群における難治のジストニア、振戦、自律神経症状、摂食に対する有効性を確認し、国際誌に報告した(J Neurol Sci, 2017)。RTTモデル動物、ES細胞を用いた心臓、肺の分子基盤、電気生理、微細構造研究で、MeCP2はTbx5を制御し、心筋同士の刺激伝道や情報の受け渡しをする介在版の未熟な形成が認められ、チャンネル遺伝子の発現変化とともに、不整脈の要因となる事を証明した。肺組織では2型肺胞上皮細胞が減少することを証明し、MeCP2は、脳幹における遺伝子発現制御に関わる可能性が示された。
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