FAM111A遺伝子は、Kenny-Caffey症候群(KCS)2型の原因遺伝子として、申請者らが同定した遺伝子であるが、FAM111Aの生体内での機能はほとんどわかっていない。FAM111Aの機能を分子生物学的に解析することにより、KCS2型にみられる症状の発症機序を解明することを目的として、本研究を行った。 KCSの著明な成長障害に注目し、FAM111Aは、軟骨細胞における分化に影響を与える分子であると考え、軟骨分化のin vivoモデルであるATDC5細胞を用いて実験を行った。KCSまたは同じFAM111A遺伝子が原因のOsteocraniostenosisの原因として報告のあるヒトFAM111A遺伝子のR569H、P527Tについて、レンチウイルスを用いてDOX誘導性FAM111A(野生株、R569H、P527T)強制発現ATDC細胞株を樹立し、軟骨分化と細胞増殖についての検討を行った。その結果は、①野生型FAM111Aを強制発現した細胞系列では、軟骨分化が抑制され、R569HとP527Tを強制発現した細胞系列ではさらに著しい抑制が認められた。②R569HとP527Tを強制発現した細胞系列では、細胞増殖能の低下が認められた。 さらに、間葉系幹細胞から軟骨細胞・骨細胞に分化する際の種々のプロモーターのCreマウスにFAM111Aの野生型や変異型を導入したトランスジェニックマウスを作成した。その結果、KCSの表現型を示すマウスも誕生している。今後詳細に検討する予定である。 本研究は、FAM111Aが軟骨細胞分化や増殖に関係する分子である可能性を示唆し、今後の検討に有用なKCSの表現型を示すトランスジェニックマウスを作成した。確定的な結論を出すまでには至らなかったが、本研究成果の詳細な検討を行うことにより、将来的にFAM111Aの生体内での役割が解明することが期待される。
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