研究課題/領域番号 |
15K09614
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 輝幸 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10246647)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | てんかん / 発達障害 / レット症候群 / シナプス / ノックアウトマウス / キナーゼ |
研究実績の概要 |
【結果】H27年度は、CDKL5 欠失によるシナプス機能異常の分子機構の解明に焦点を当てた研究を推進した。我々が作製したCyclin-dependent kinase-like 5 (CDKL5)ノックアウト(KO)マウスは、興奮性シナプス後肥厚部 (PSD)においてNMDA型グルタミン酸受容体サブユニット蛋白GluN2Bの異常集積を来す。そこで我々はCDKL5が生理的条件下でPSD局在蛋白をリン酸化し、それらの蛋白動態を制御するという仮説を立て、その検証を行った。方法として、NMDA受容体サブユニット蛋白とその相互作用蛋白を網羅的に抽出、大腸菌及び小麦胚芽抽出系を用いて組み換え蛋白を発現・精製し、in vitro キナーゼアッセイ、Pho-tag PAGE解析などによって、リン酸化の同定を進めた。その結果、NMDA受容体サブユニット蛋白GluN2Bと親和性の高い足場蛋白SAP102に結合し、細胞内輸送に重要な役割を果たす蛋白の一つを基質として同定し、更にそのリン酸化が、SAP102との結合性を動的に調節する事を同定した。 【意義・重要性】本年度の最も重要な成果は、CDKL5のこれまで未知のリン酸化基質を同定し、そのリン酸化がシナプス受容体蛋白の動態制御機構である事を初めて見出した事である。CDKL5遺伝子変異に伴う病態は、CDKL5リン酸化の欠失によるシナプス受容体蛋白動態調節異常によるシナプス機能不全である事が強く示唆され、神経発達障害の分子基盤、病態機序解明のための大きな進歩と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、CDKL5 loss-of-function (LOF) 分子機構の解明という目的に向けて、最も重要なポイントである、興奮性シナプス受容体におけるCDKL5のリン酸化基質とその機能を解明できた。これは極めて重要な新規の発見であり、今後ヒトの病態解明のための重要なデータであり治療法解明のための理論的根拠である。当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究の成果を更に追求し、CDKL5による興奮性シナプス後肥厚部蛋白のリン酸化の有無による蛋白動態の差異を定量的に同定する。リン酸化のアミノ酸部位を同定し、リン酸化による機能調節のより正確な分子機構を同定する。更にin vivoにおいてCDKL5リン酸化の喪失によりシナプス機能不全が生じる分子機構を解明する。同時に、Cdkl5 KOマウスの海馬、扁桃体、大脳皮質の微細構造・機能解析を進め、異常表現型の責任病巣をより正確に同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度末に計画していた実験予定が変更となり、試薬購入の時期を次年度に移したことから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度分として請求した助成金と合わせ、試薬購入に充てて、当初の研究計画を進める。
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