研究課題
(1) H29年度は、CDKL5遺伝子変異によるてんかん性脳症の発症機序の一つとして、遺伝子プロモーター領域の変異による遺伝子発現の障害を考え、更に新規遺伝子治療法の開発の基盤として、CDKL5遺伝子発現調節機構のシス因子の同定を行った。方法として、マウスゲノム上、Cdkl5遺伝子開始点の上流5kbから下流2.5kbまでを、ホタルルシフェラーゼ発現ベクターpGL4.12 に細分化しクローニングした。マウスNeuro2A細胞にウミシイタケベクターと共導入し、24時間後にDual-Glo Luciferase Assay Systemを用いて発光度計測し、ホタル/ウミシイタケの発光度の比を換算した。その結果、Cdkl5遺伝子の上流約300-500 bpにエンハンサー領域、上流約500-750 bpにサイレンサー領域、上流約750-1kbにエンハンサー領域を同定した。本成果は、マウスCdkl5遺伝子のプロモーター・エンハンサー領域を始めて同定し、平成30年度より開始するCdkl5ノックアウト(KO)マウスに対するアデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた遺伝子治療研究において必要なプロモーター情報として貴重なデータである。更にヒトのCDKL5遺伝子調節機構の解明への基盤データとなる。(2) Cdkl5 KOマウスの海馬シナプスにおけるGluN2B型NMDA受容体の過剰集積とそれに伴う痙攣感受性の異常亢進、電気生理学的異常、更にGluN2B選択的阻害薬による易痙攣性のレスキューを、論文にまとめ、H29年7月にNeurobiology of Disease誌上で発表した。(3) Cdkl5 KOマウスの不安・恐怖関連行動の異常亢進、社会性の変化、空間参照記憶の獲得・長期保持の障害、海馬ニューロン形態異常等の特徴的表現型を論文にまとめ、H30年4月にPLOS ONE誌上で発表した。
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PLOS ONE
巻: 13 ページ: e0196587
10.1371/journal.pone.0196587
Neurobiology of Disease
巻: 106 ページ: 158~170
10.1016/j.nbd.2017.07.002