平成30年度に大阪大学病院で先天性GPIアンカー欠損症(IGD)と新規診断した症例はなかった。平成26年度より開始したピリドキシン療法は9例に対し長期継続している。その中でピリドキシン開始後に発作が一時期抑制され再燃した症例でも更にピリドキシンを最高用量まで増量した例で再び発作の消失が得られかつ掴まり立ちまで運動発達を認めた例があった。この例は頭部MRI上も大脳萎縮の進行はなく脳波検査でもてんかん性異常突発波の著明な減少や基礎波の出現を認めている。ゆえにピリドキシンは長期投与が有用と考えている。発作のIGDの診断マーカーについてはリポ蛋白分画、CEA、Hb分画など検討したが感度の高い診断マーカー確立には至らなかった。この間にIGDの一病型であるPIGOの9症例につき遺伝子型と臨床型の相関の検討を行い、Human Mutation誌に報告した。その中で、高ALP血症とフローサイトメトリーによる分析がIGDの診断に有用であること、しかしGPIアンカー型蛋白質の発現量と高ALP血症の値とは相関しないこと、また機能解析によっても臨床的重症度とも同じく相関していなかったことを明らかにした。更に他の病型であるPIGAと比較し、PIGOは臨床的特徴(Hirschsprung病、指趾末梢欠損、高ALP血症)を有することを明らかにした。以上より病型により臨床症状のスペクトラムが異なることが分かった。その他、IGDにおける血清ALP値の検討を行った。その中で高ALP血症はIGDに必ず合併するとは限らず、個々のIGD症例においてもALP値が高値~正常値を呈する場合があることを報告した。特にALP値が正常範囲を呈するとされるPIGLでも高値を示した症例がありALP値を上昇させる他の要因の可能性を推定した。
|