研究課題/領域番号 |
15K09619
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下野 九理子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 講師 (60403185)
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研究分担者 |
松嵜 順子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 特任講師 (00634172)
富永 康仁 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 助教 (20599245)
岩谷 祥子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 特任助教 (60724903)
毛利 育子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (70399351)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ローランドてんかん / 脳磁図 / 言語認知 / BECTS |
研究実績の概要 |
目的:ローランドてんかんの小児における言語認知機能と聴覚性言語タスクに対する脳活動反応の関連について明らかにするために、脳磁図(MEG)を用いて検討を行った。 方法:大阪大学医学部小児科および関連病院神経外来に通院中のローランドてんかんと診断された患者に書面による同意を得て、3音素からなる、単語リスニング課題中の脳活動をMEGで計測した。知能検査はWISC-IVを用いた。対象は神経学的な既往のない児童(コントロール群)である。 結果:ローランドてんかん群(RE)は9名(男児2名、女児7名)、コントロール群(CL)は10名(男児10名)で平均年齢はそれぞれ 10.3 (±2.5), 13.1(±1.2)であった。IQは95.2 (±12.5), 116.1 (±18.2)であった。RE群のてんかん発症年齢は平均5.4(±1.6)歳であった。RE群のうち3名で標準以下のIQを示し、さらにfull scale IQでは正常範囲に入る患者においても統語の理解の得点が低い傾向を示した。言語認知課題に対する脳活動の反応はRE群において左半球の一次聴覚野において遅延し、Wernicke野、中心溝で低反応であったが、Broca野においては明らかな差を認めなかった。またRE群に於いてWernicke野の活動とNREM期のspike頻度との間には負の相関を認めた。 考察:感覚性言語認知に関与するWernicke野及び左中心溝はREのspike局在と一致しており、この領域の認知活動に対する反応性が低下していることは、てんかん性放電による影響あるいは、てんかん性放電をもたらす神経細胞の異常が関与している可能性がある。 結語:RE児に於いては特にspike頻度の高い症例では聴覚性言語認知について注意して評価を行う必要があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりにほぼ進んでおり、仮説どおりの結果を得ているが、ローランドてんかん児が当初の計画より人数が集まっていない。コントロール群に関して、男児ばかりで検討しており、ローランドてんかん児では女児が入っているため、現在コントロール群の女児をリクルートして計測・検査を行なっている。概ね男児と同等の人数のコントロール女児が集まりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後非てんかん児童の女児のデータも入れて、比較検討し、また、治療薬の有無などによる違いについてローランドてんかん児における言語認知への影響について考察していく。また、脳磁図のデータの解析方法として言語認知課題中の周波数別の解析やネットワーク解析なども行なっていきたいと考えている。 2017年6月の日本小児神経学会、2017.9月の国際てんかん学会にて発表し、論文作成を予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者のスケジュールの都合で2017.4月以降に脳磁図の計測や知能検査、MRI検査が予定されている人がいる。したがって、それらの検査の費用及び、被験者への謝金などへ予算を次年度に繰り越す必要があった。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年4月以降の検査費用及び謝金の支払いを行う。また2017.6月日本小児神経学会(大阪)と9月(国際てんかん学会 バルセロナ)に学会発表予定であり交通費に充てる予定。さらに学術論文への投稿のための英文校正の費用を予定している。
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