研究課題
全国より収集したけいれん重積型脳症および熱性けいれん患者の髄液検体のうち、検体採取後1時間以内に遮光(ビタミンB6化合物は光で分解されるため)が行われた検体のみをビタミンB6化合物の分析対象とした。その結果、分析対象になったのは、けいれん重積型脳症患者5名、熱性けいれん患者17名の髄液検体であった。けいれん重積型脳症、熱性けいれんの間で年齢に有意差はなかった。髄液採取のタイミングはいずれにおいても中央値が0日(発症当日)であり、有意差はなかった。熱性けいれん患者のほとんどは、髄液中ピリドキサールリン酸とピリドキサールは基準値内であった。一方、けいれん重積型脳症患者では3名(60%)において髄液中ピリドキサールリン酸が低値であり、4名(80%)において髄液中ピリドキサールリン酸/ピリドキサール比が低値~正常下限であった。髄液中ピリドキサールリン酸はけいれん重積型脳症群で低値の傾向(中央値11.3 vs. 31.5 nmol/L、p = 0.0999)を示し、髄液中ピリドキサールリン酸/ピリドキサール比は有意に低値(中央値0.5 vs. 1.0、p = 0.0417)であった。ビタミンB6化合物濃度と後遺症の重症度(Pediatric Cerebral Performance Category, PCPC)の関連性については、症例数が少ないため検討を行わなかった。これらの結果より、けいれん重積型脳症では早期発作後の時点において、熱性けいれんにはみられないビタミンB6代謝の変化が起こっている可能性が判明した。この代謝変化がけいれん重積型脳症の発症機序とは結論できないものの、発症直後の段階においてけいれん重積型脳症と熱性けいれんとを区別するのに有用と考えられた。けいれん重積型脳症に対するビタミンB6の治療効果については、今後の検討が必要である。
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Brain Dev
巻: 42 ページ: 402-407
10.1016/j.braindev.2020.02.002