研究課題/領域番号 |
15K09623
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
長谷川 高誠 岡山大学, 大学病院, 講師 (90467738)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨芽細胞 / 軟骨細胞 |
研究実績の概要 |
我々の施設のMulticentric Calpal Tarsal Osteolysis (MCTO)患者に認められたp.Arg63Gly(R63G)変異、過去の文献で表現型の浸透率が100%ではない p.Thr62Pro(T62P)変異を発現する発現ベクターと野生型MafBの発現ベクターをマウス軟骨細胞様細胞であるATDC5細胞にtransfectionすることにより、野生型および変異型MafB蛋白を一過性に発現させ、軟骨細胞の肥大化に関わる転写因子であるRunx2 mRNAの発現量をTransfection後2日目に検討した。まずtransfectionの2日後にコンフレントにならないように細胞数を減らしてtransfectした場合、Runx2 mRNAの発現量は野生型=T62P>>R63Gで優位に発現量がR63G変異を導入した場合において低下していた。一方でTransfectionの2日を待たずにコンフレントとなるように細胞数を増やした条件で検討した場合、Runx2 mRNAの発現量は前述の条件とは異なり、R63G≧T52P>>野生型であった。これらのことから軟骨の分化段階によって野生型、変異型MafBの軟骨分化に与える作用は異なる可能性が示唆された。 一方、マウス骨芽細胞系細胞であるMC3T3E1細胞に野生型、変異型MafBを発現させた場合はいずれもMockを導入した場合と異なり、細胞が培養途中で死滅することが確認された。このことから、骨芽細胞系の細胞においてはMafBの過剰発現は細胞死を誘導する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨芽細胞に野生型、変異型MafBを導入した際に細胞死がおこったことは想定外のことであったが、軟骨細胞での野生型、変異型MafBの機能についての想定ができたため、ほぼ予定通りの結果を得られていると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの軟骨細胞系細胞ATDC5において培養条件によって野生型、変異型MafBの導入に対する軟骨分化細胞に関わる転写因子であるRunx2mRNAの発現量が異なることが分かったため、それぞれの条件におけるX型コラーゲン、II型コラーゲン、MMP13、Aggrecanの発現について検討し、変異型MafBの軟骨細胞の分化に与える影響についてさらに検討を加える。またそれぞれの場合における増殖能についても検討する。 ATDC5細胞はインスリン、トランスフェリン、セリンの存在下での長期の培養により増殖軟骨細胞から肥大軟骨細胞への分化を誘導することができるため、恒常的に野生型、変異型MafBを発現する細胞の構築 を検討する。これらの細胞とMock vectorの導入細胞との増殖能や分化能、さらにアポトーシスなどについて比較検討することにより変異型MafBが軟骨細胞の分化や増殖などに与える影響の解析を検討する。 骨芽細胞系についてはMafBの導入により細胞の死滅が確認されたため、細胞のアポトーシスが誘導されるのかどうかについてTunnel染色などをもちいて検討する。またSiRNAを用いたMafBのノックダウンにより過剰発現の系と同様に細胞死が誘導されるかどうか、アポトーシスの有無について検討を加える。 上記について検討を行うことで本年度も引き続きMCTOにおける「骨の溶解」の病態の解明を目指す。
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