研究課題
PI3K-AKT-mTOR経路は、てんかんおよび自閉症に関与する共通の分子経路である。Phosphatase tensin homolog (Pten)は本経路を負に制御する重要な脂質脱リン酸化酵素であり、その突然変異により、多発腫瘍を特徴とするPten過誤腫症候群の他、自閉症、てんかんなどの神経学的徴候を来たすことが知られている。今回、我々はPomc陽性ニューロン特異的Pten欠損マウスを作成し、その神経学的フェノタイプを観察した。本マウスは生後9週目頃からけいれんを自然発症し、ほぼ全てのマウスが11週頃までに死亡した。生化学、顕微鏡学的観察結果を通じて、本マウスの海馬歯状回は、年齢依存的に肥大・変形し、またけいれんに先立って、海馬における興奮抑制バランスおよびCrh-Pomc (ACTH)バランスが変化していることを明らかにした。ビデオモニター下での脳波測定では、海馬起源と考えられるてんかん性放電を捕捉した。mTOR阻害薬・ラパマイシンの投与により、けいれん症状は軽減し、これらの分子フェノタイプも正常化することを確認した。本マウスは脳内限定的な領域でPtenを欠損しても、難治性・致死性てんかんを発症すること、AKT-mTOR経路とCrh-ACTH軸との機能的関連性をはじめて示した研究である。AKT-mTOR経路の過剰活性化は、大脳皮質異形成を来たすことが知られており、難治性てんかんの分子病理と新しい治療の確立に有用である。Matsushita et al., Sci Rep 6, Article number: 22991 (2016) doi:10.1038/srep22991.
1: 当初の計画以上に進展している
原著論文を発表した
新しい治療点を探索する
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Sci Rep 2016
巻: 6 ページ: 22991
10.1038/srep22991