研究実績の概要 |
研究の目的は、先天性ゴナドトロピン分泌不全症男性の遺伝子異常を確定した正確な診断に基づき、精子形成に有利な治療法を検討することであった。Ion Torrent PGMによるターゲットを定めた48遺伝子パネルを用いた解析を行った症例は55症例に及んだ。そのうち、パネル解析で遺伝子異常が同定できた22人について、その遺伝子型と表現型について記載した論文を発表した(Aoyama K et al., Molecular genetic and clinical delineation of 22 patients with congenital hypogonadotropic hypogonadism. J Pediatr Endocrinol Metab. 2017 ;30(10):1111-1118.)。また、治療に対する反応性であるが、現在、治療中の最年長の男性患者が24歳であり、妊孕性についてどのような治療が有利かという点については言及するまでにいたらなかった。治療のプロトコールは、まずはhCGで二次性徴の誘導を行い、それで反応しない男性に対し、研究的治療としてrhFSHを先行投与する、というものであったが、hCGから開始しても二次性徴の誘導については獲得できた症例が多かった。また、rhFSHの先行投与を行っても結果として、二次性徴の誘導も起きない症例も存在し、ゴナドトロピン治療に対する反応性の個人差が大きいことが示された。また、臨床的診断では、明らかに先天性ゴナドトロピン分泌不全症であっても、トリオ解析を前提としたTruSight Oneシーケンスパネルでは、1例のみKabuki症候群の原因遺伝子として知られているKMT2Dに変異が同定されたに留まり単独型ゴナドトロピン欠損症の新規遺伝子の発見までには至らなかった。
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