研究課題/領域番号 |
15K09630
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
鳴海 覚志 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, 室長 (40365317)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 小児内分泌学 / 甲状腺形成異常 / 遺伝学 / エピジェネティクス / メチローム |
研究実績の概要 |
【研究実績の概要】 3年計画の2年目にあたる本年度(H28年度)は、前年度に次世代シーケンサーを用いた解析で同定した候補領域についての検証実験を遂行した。次世代シーケンシング解析では、大量のゲノム領域を解析可能であるため、αエラー(偽陽性)を生じる可能性の制御が肝要となる。そのため、原理の異なる解析手法を用いて検証実験を行うことに有利性があると考えた。具体的には、次世代シーケンシングよりも解像度の点で劣るものの、ゲノム全体をスキャン可能な手法であり、かつ、解析精度は次世代シーケンシングを上回るという異なる特性の解析であるビーズアレイ法(イルミナ社Infinium MethylationEPIC Kit)を用いた。本手法では、850,000箇所の既知のメチル化領域の解析を一斉かつ高精度に解析することが可能である。本年度の研究では、甲状腺形成異常患者10名と、年齢をマッチさせた対照小児16例につき解析を行った。その結果、次世代シーケンシング解析でメチル化率の差異が観察されていたゲノム領域は、ビーズアレイ法による解析では統計学的に有意な差異は検出されず、再現されなかった。全体的にみると、次世代シーケンシング解析のデータはサンプル間のばらつきが大きく、このばらつきの大きさが偽陽性の原因となったと推測された。 【成果発表】 本研究の一環として行った、先天性甲状腺機能低下症患者の遺伝子解析を通じて、世界で5例目となるDUOXA2遺伝子変異症例を遺伝子診断し、学会報告および論文報告を行うことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、次世代シーケンシング解析で同定した候補領域の検証をビーズアレイ法で行い、再現された領域の詳細解析へと進む予定であったが、次世代シーケンシング解析の結果とビーズアレイ法の結果が想定以上に不一致であった。ただし、貴重検体のデータの蓄積は進んでおり、今後の研究展開に活用可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、より確度の高いデータが取得されていると推測されるビーズアレイ法のデータをより詳細に検討することと、エクソーム解析などの他のモダリティのゲノムワイド解析を組み合わせるなどして、甲状腺形成異常の分子病態に関する検討を継続する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H28年度の研究成果発表のための米国出張を3/31-4/3の日程で行った(米国内分泌学会;オーランド、米国)。H28年度予算として計上した航空券、宿泊の費用は既にH28年度に手配し、立て替え払いとして処理していたが、施設での旅費精算が帰国後のH29年度となる都合上、該当する金額を繰り越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
H29年度予算として旅費、宿泊費の精算を行う。
|