研究実績の概要 |
【研究実績の概要】 3年計画の最終年度にあたる本年度(H29年度)は、前年度に探索ステージの確認実験として行ったビーズアレイ法によるゲノムワイドメチル化解析の結果(探索ステージの陽性シグナルは否定的であった)を見直し、新たに疾患責任候補領域の絞り込みおよびクラスタリングによる疾患特異的なメチル化パターンの絞り込みを試みたが、患者間で共通するメチル化異常遺伝子座の特定にはいたらず、また、疾患特異的なメチル化パターンを見出すこともできなかった。以上のデータを総合すると、以下の可能性が考えられた。(1)甲状腺形成異常の発症要因としてメチル化異常は関与しない (2)甲状腺形成異常の発症要因としてメチル化異常は関与するがその影響が小さいため実験的な検出が困難 (3)甲状腺形成異常の発症要因としてメチル化異常は関与するが、異常は器官特異的に生じており、末梢血の解析では評価できない 【成果発表】 本研究の一環として行った先天性甲状腺機能低下症患者の遺伝子解析を通じて、残存活性を有するTPO変異が特異な表現型の先天性甲状腺機能低下症と関連することを論文報告した。 【今後の研究の展開】 本研究を通じて、甲状腺形成異常の分子メカニズムの解明には至らなかったが、本邦での一般人口における頻度1/10,000とされる稀少な検体を100以上収集することができた。このため、引き続き分子遺伝学的手法を用いた解析を通じて、その分子メカニズム解明につなげたいと考える。具体的な方法論としては、エフェクトサイズの小さい複数の遺伝因子の複合が発症機序に関与することを想定し、ゲノムワイド相関解析(GWAS)による解析が有力と考える。
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