研究課題/領域番号 |
15K09631
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
山本 俊至 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (20252851)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒトiPS細胞 / シナプス機能 / 発達障害 / 遺伝子ノックダウン |
研究実績の概要 |
発達障害患者を対象としたゲノム解析研究により、多様なゲノム異常が疾患の発症に関わっていることが明らかになってきた。その多くはシナプス機能に関連しており、シナプスの機能不全が発達障害の本質であると考えられるようになってきた。ただ、ゲノム情報からシナプス病態がシミュレーションされていることがほとんどであり、細胞レベルでの分子病態の実態はまだほとんどわかっていない。本研究では、シナプス機能に関連する分子のうち、我々がこれまでに実際に発達障害患者で異常を明らかにしてきたNADE、14-3-3、BSNというBDNF伝達系の分子に着目して、ヒトiPS細胞から分化誘導した神経細胞レベルでの病態解析を行い、分子伝達機能やその病態を明らかにすることが目的である。BDNF伝達系はシナプス前膜機能に関連しており、mTOR inhibitorによる治療効果が期待できると考えている。本研究の初年度において、正常ヒトiPS細胞に対するゲノム編集方法について検討し、本年度はゲノム編集方法のひとつであるCRISPR/Casシステムを試みた。ただし、iPS細胞におけるクローン化は実際には非常に困難を極め、複数クローンのiPS細胞を得られなかった。そこで、siRNA による部分的・一過性の遺伝子ノックダウンによる方法を行った。その結果、神経分化誘導効率が低下し、spineが形成されないことが示された。この結果が真にノックダウンによるものか、実験による人為的な結果かを検証するためには、レスキュー実験によってphenotypeが改善することを証明する必要がある。そのため、次年度のレスキュー実験に向けた準備を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、正常ヒトiPS細胞に対してCRISPR/Casシステムによるゲノム編集を試みた。しかし、ゲノム編集を行ったiPS細胞を複数クローン樹立することができなかったため、当初計画どおり、次にsiRNA による部分的・一過性の遺伝子ノックダウンによる方法を行った。それによる所見の検証のためはレスキュー実験が必要であり、現在その準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、免疫組織染色によりシナプス形成の状態を評価している。シナプス機能の評価法として、パッチクランプによる生理学的機能評価を取り入れ、より高度な神経細胞機能も評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた予算に若干余剰が生じたが、誤差範囲である。
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次年度使用額の使用計画 |
ほぼ計画通り使用しており、計画に変更はない。
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