発達障害への包括的治療法によって母親養育レジリエンスは改善するか？

2017 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 15K09632
• 研究機関: 久留米大学
• 研究代表者: 山下 裕史朗 久留米大学, 医学部, 教授 (90211630)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: 養育レジリエンス / 発達障害 / ペアレントトレーニング / サマートリートメントプログラム / 注意欠如多動症

研究実績の概要

本研究の目的は、発達障害とくにADHDの包括的治療法によって保護者の養育レジリエンスがどのように変化するかを明らかにするものである。具体的には、包括的治療法の治療エビデンスが確立しているSummer Treatment Program （STP)とペアレントプログラム（トリプルP)前後における養育レジリエンスを養育レジリエンス要素質問票を用いて評価した。
１．平成29年度は、第13回くるめSTPを8月14～19日に久留米特別支援学校で実施し、12名のADHD児童が参加した。保護者にはSTP期間中に5日間の集中ペアレントトレーニングを実施した。STP前後とフォローアップで養育者に質問紙および養育レジリエンス要素質問票を実施した。養育者への質問紙では、ADHD rating Scaleはじめ行動尺度の有意な改善がSTP前後で認められた。STP実施実務上の都合で1回の参加者が12名と少なくなったため、平線30年8月実施のSTP参加者を含めた4年間の参加者48名の児童と保護者のデータをプールして平成30年度後半に解析する予定である。
２．トリプルPを用いたペアレントトレーニングを福岡県久留米市で継続実施し、新たに田川市で開業医院をベースとしてトリプルPを開始した。トリプルPに参加した86名の保護者の養育レジリエンス要素質問票の参加前後の変化として、肯定的な捉え方、社会的支援、子どもの特徴に関する知識ともに有意に改善しており、トータルスコアも改善していた。また効果は６か月後も持続していた。平成27年～29年のトリプルP参加者は101名であり、平成30年度の参加者も合わせて検討する。唾液のコルチゾールも検体は収集しており、測定および統計を進めているところである。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

サマートリートメントプログラム参加者定員が24名から12名に減少したため、十分なデータ数を収集するのに時間がかかったため。また、トリプルPも1セッションが2か月以上かかるのでデータ取得に時間がかかっている。

今後の研究の推進方策

くるめSTP参加児保護者の養育レジリエンス要素質問票データの集計解析と論文化。
トリプルP参加保護者の養育レジリエンス要素質問票および唾液コルチゾール等のデータをまとめ、論文化する。延長によって十分なデータ数が期待される。

次年度使用額が生じた理由

STP実施実務上の都合、すなわち指導する臨床心理士や学生カウンセラーが十分確保できなかったことや特別支援学校サイドの理由で参加ADHD児が12名の2クラス＝24名であったのが、1クラス12名と少なくなった。それにともなう学生指導のための人件費や消耗品費が少なくて済んだ。平線30年8月実施のSTP参加者を含めた4年間の参加者48名の児童と保護者のデータをプールして平成30年度後半に統計解析する予定であり、トリプルP参加者の唾液コルチゾール解析や統計解析も平成30年度に延期したため経費が少なくて済んだ。平成30年では持ち越した助成金を用いて上記研究を完了する。

研究成果

• [雑誌論文] Increased cortisol awakening response after completing the summmer treatment program in children with ADHD (2017)
  • 著者名/発表者名: Okabe R, Okamura H, Egami C, Tada Y, Anai C, Mukasa A, H, Egami C, Tada Y, Anai C, Mukasa A, Iemura A, Egami C, Tada Y, Anai C, Mukasa A, Iemura A, Nagamitsu S, Furusho J, Y, Anai C, Mukasa A, Iemura A, Nagamitsu S, Furusho J, Matsuishi T, Yamashita Y
  • 雑誌名: Brain & Development 巻: 39 ページ: 583,-592
  • DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.braindev.2017.03.001
  • 査読あり
• [雑誌論文] 注意欠如・多動性障害の対応と治療 (2017)
  • 著者名/発表者名: 山下裕史朗
  • 雑誌名: 別冊 日本臨床 巻: 37 ページ: 85-89
• [雑誌論文] 発達障害をもつ子どもの初期対応と地域での連携 (2017)
  • 著者名/発表者名: 山下裕史朗
  • 雑誌名: 小児歯科臨床 巻: 22 ページ: 30-36
• [学会発表] 発達に課題のある幼児期の子どもの親の養育レジリエンスを高めるートリプルPによる介入 (2017)
  • 著者名/発表者名: 江上千代美、山下裕史朗
  • 学会等名: 日本赤ちゃん学会第17回学術集会
• [学会発表] 養育レジリエンスを高める介入支援 (2017)
  • 著者名/発表者名: 江上千代美
  • 学会等名: 日本LD学会第26回大会