研究課題/領域番号 |
15K09633
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所) |
研究代表者 |
室谷 浩二 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), その他部局等, 医長 (60239556)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 褐色細胞腫 / パラガングリオーマ / VHL / SDHB |
研究実績の概要 |
本研究では,小児期発症褐色細胞腫/パラガングリオーマ(以下PCC/PGL)PCC/PGL患者の臨床および分子遺伝学的解析を行うことにより,小児患者の特徴を明らかとし,早期発見,適切な治療に向けた指針を示すことを目的としている. 小児期発症褐色細胞腫/パラガングリオーマ(以下PCC/PGL)患者8例を集積し,臨床症状を検討した.発症年齢は6-15歳,内訳は,片側PCC5例, 両側PCC1例, 片側PGL2例であった.全例,高血圧以外の非特異的な症状を主訴に初診していた.成人症例では,高血圧に加えて,頭痛,動悸,発汗過多が3主徴と言われているが,今回の8症例では,これら3主徴が揃わない症例が多くみられた.小児では高血圧以外の非特異的症状を初発とする場合が多いことから,しばしば診断確定に長期間を要していると推測される.日常診療における血圧測定の重要性や,非特異的症状から褐色細胞腫の可能性を想起することを,広く一般小児科医に啓蒙していく必要があるものと考えられた. 今回集積した小児PCC/PGL 8症例からインフォームド・コンセントを取得後,末梢血白血球および摘出した腫瘍からゲノムDNAを抽出した.分子遺伝学的解析の結果,8例中6例に, 末梢血and/or腫瘍組織でVHL, SDHB変異を証明した.末梢血由来DNAで変異(生殖細胞系列変異)が同定されたのは4例であった.生殖細胞系列変異の同定されなかった4例のうち2例で,腫瘍組織由来DNAでの変異(体細胞変異)を同定した.生殖細胞系列変異の同定された4例のうち1例で,生殖細胞系列変異に加えて体細胞変異(2nd hit)を同定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな症例を2例追加し,合計8例の解析を実施した点は,当初の計画を上回っている. 当初の計画では,(1)末梢血由来DNA, 腫瘍由来DNAを対象としたSanger法による遺伝子変異解析(RET,VHL,SDHB,SDHD)(2)腫瘍由来DNAを対象としたMLPA法による欠失解析(VHL,SDHB,SDHD)(3)病理組織学的検討(i)GAPP分類を行い,「転移の有無」と比較検討する. (ii)SDHB免疫染色を行い, 遺伝子解析結果と比較検討する.(4)臨床情報の収集 である. これらの計画のうち,計画(1)および 計画(4)については,全例で実施済み.計画(2)については,6例で実施済み,2例で解析途中.計画(3)については,2例で実施できておらず,来年度以降に実施予定. 以上から,予定した計画は,概ね順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
今後, さらなる病態解明をめざし, 1. VHL体細胞変異のみを認めた症例において, 腫瘍組織でのVHL遺伝子プロモーター領域のメチル化解析, 2. 生殖細胞系列変異, 体細胞変異いずれも認めなかった症例において, 他の既知原因遺伝子を対象としたSanger法による解析, 腫瘍組織でのアレイCGH, を行う方針である. 加えて,摘出腫瘍の病理組織標本を用いてGAPP分類,SDHB免疫染色を完了し,悪性化,変異遺伝子との関連性を検討する計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
24,365円と些少な額であり,単独で試薬購入にも不足するため,次年度に使用予定とした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に使用予定の試薬購入費用などにあてる予定である.
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