本研究では,小児褐色細胞腫/パラガングリオーマ(以下PCC/PGL)患者の臨床および分子遺伝学的解析を行うことにより,小児患者の特徴を明らかとし,早期発見,適切な治療に向けた指針を示すことを目的としている. PCC/PGL患者9例を集積し,臨床症状を検討した.発症年齢は6-15歳,内訳は,片側PCC6例,両側PCC1例,片側PGL2例であった.全例,高血圧以外の非特異的な症状を主訴に初診していた.成人症例では,高血圧に加えて,頭痛,動悸,発汗過多が3主徴と言われているが,今回の9症例では,これら3主徴が揃わない症例が多くみられた.小児では高血圧以外の非特異的症状を初発とする場合が多いことから,しばしば診断確定に長期間を要していると推測される.日常診療における血圧測定の重要性や,非特異的症状から褐色細胞腫の可能性を想起することを,広く一般小児科医に啓蒙していく必要があるものと考えられた. 今回集積したPCC/PGL9症例からインフォームド・コンセントを取得後,末梢血白血球および摘出した腫瘍からゲノムDNAを抽出した.分子遺伝学的解析の結果,9例中7例に,末梢血and/or腫瘍組織で,VHL,SDHB変異を証明した.末梢血由来DNAで変異(生殖細胞系列変異)が同定されたものは5例であった.生殖細胞系列変異の同定されなかった4例のうち2例で腫瘍組織由来DNAでの変異(体細胞変異)を同定した.生殖細胞系列変異の同定された5例のうち1例で,生殖細胞系列変異に加えて体細胞変異(2nd hit)を同定した.
|