研究課題
小児の単一遺伝子性糖尿病(新生児糖尿病と若年発症2型糖尿病(MODY))で、既知の遺伝子異常を同定できない患児について、卓上次世代シーケンサを用いた既知遺伝子内変異の同定をはかる研究である。平成27年度は新規症例の集積とともに、集積した症例に対して通常のSangerシーケンスによる遺伝子解析を行うとともに、変異が同定できなかった症例について次世代シーケンサによる解析を行った。平成27年3月末の時点で新生児糖尿病70例、MODYの疑われる患児361例を集積した。MODYの疑われる患児に対しては新生児糖尿病症例については,糖代謝関連35遺伝子を含むパネルを作成し、新生児糖尿病についてはさらにKCNJ11, ABCC8のイントロン、プロモータを含む全遺伝子領域をカバーするパネルを作成した。順次解析中である。新生児糖尿病については、1例で新たなKCNJ11遺伝子変異(c.601C>T)を同定したが、コーディング領域内変異の見逃し例であった。新たに変異が同定された患児については、インスリン治療中であったが、担当医に結果をフィードバックし、経口のスルホニル尿素剤に変更してインスリン離脱し、良好な管理が得られた。同様に既解析の他の新生児糖尿病患児についても遺伝子型ー臨床型関連を検討し、実際に担当医にフィードバックすることで25例中22例(88%)でインスリン離脱に成功し、既知遺伝子変異の包括的解析が臨床上極めて有用であることを見出した(論文投稿中)。現時点でMODY疑い患者に次世代シーケンサ新規遺伝子変異は同定されていないが、未同定例について染色体6q24部位のメチル化特異的PCRにより父性片親性ダイソミーを3例に同定した。低出生体重のMODY様糖尿病の新たな分子機構と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
予定より早い患者検体の集積が行えたため、検体の解析が終了していないが、途中経過として研究実績の概要に述べた新たな所見を同定し、今後さらなる成果が期待できる。
平成27年度の解析と検体収集を続行するが、単一遺伝子性糖尿病の原因として、小胞体ストレス応答関連遺伝子が注目されつつあり、新たな遺伝子の同定が報告されている(IER3IP1, PPP1R15Bなど)これら遺伝子を含むパネルを再構築する方向に計画修正する必要がある。
購入予定消耗品の価格が予定より少なかったため
次年度以降の試薬購入費に充当する。計画よりも多くの検体が収集できており、今後の解析のために必要である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
Diabetic Medicine
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