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2017 年度 実施状況報告書

新生児肺腫瘍 (FLIT) における ALK と発症機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K09637
研究機関山形大学

研究代表者

小野田 正志  山形大学, 医学部, 非常勤講師 (10582562)

研究分担者 浅尾 裕信  山形大学, 医学部, 教授 (80250744)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードALK転座 / 新生児間質性肺腫瘍 / FLIT / ALK関連腫瘍 / G-band / FISH / 5'RACE / 全ゲノムシークエンス
研究実績の概要

新生児肺腫瘍Fetal Lung Interstitial Tumor(FLIT)は,2011年に新規分類・報告された稀な新生児間質性肺腫瘍である.本研究では,FLITの疾患特異的遺伝子同定と,発症機序の解明を目的とする.疾患関連遺伝子の同定は,診断のみならず,分子標的薬による治療成績向上が見込まれ,稀な腫瘍の治療法拡大につながり,研究遂行の意義は極めて高い.
研究対象として,腫瘍摘出後病理学的にFLITと診断された3例で解析が行われた.G-band法による腫瘍組織の染色体解析では,3例中1例で腫瘍細胞20細胞中4細胞にt(2;12)(p23;p13)が証明された.FLITは,病理像がIMTの間質像に似ることから,FLITの疾患特異的転座にALK2p23が関与している可能性が示唆された.
FISH法によるALK転座解析は,3例中3例で行われ,うち2例でALK break signalが検出され,FLITにALK転座が関与していることが判明した.
免疫組織化学的染色法によるALK発現解析は,3例中3例で行われ,うち2例でALK発現が陽性であった.FISH法でALK転座が証明された2例は,いずれも陽性と判断された.ALKは細胞質内に豊富に発現していた.
ALK新規融合遺伝子解析は,3例中2例で行われ,1例は腫瘍組織からRNAを抽出し,5’RACE法でALKのパートナー解析を行い,新規融合遺伝子alfa-2 macroglobulin(A2M)-ALKを同定した.もう1例は,FFPE標本からRNAを抽出,精製したが,5’RACE法に適さず,解析を断念した.さらに解析系を発展させ,FFPE組織からDNAを抽出し,全ゲノムシークエンス法(WGS) を応用した転座解析系を新規樹立し,A2M-ALK転座解析を同定した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

肺腫瘍の摘出標本を病理学的に検討し,FLITと診断された例は3例あった.これは当初の想定より少ないが,FLITは,新規分類・ 報告された稀な新生児間質性肺腫瘍で,旧来の肺芽腫(PPB)等に病理学的に類似するため,新規例を除き依然未診断例が混在していると推察された.今後,疾患の理解が進むとともに報告数は増加すると推察される.
FLITやFLIT類縁疾患は,疾患の性質上,摘出術後に病理学的判断が加えられて診断に至る.PPBのような悪性度の高い肺腫瘍とは異なる臨床経過をとるため,固形腫瘍として切除される場合,G-band法による腫瘍組織の染色体解析が省略されたり,ホルマリン標本, FFPE標本のみで評価,保存される例が少なくない.このような場合,これらの標本からRNA,DNAの抽出を試みる必要があるが,精製されるRNA,DNAの断片化が問題となり,転座解析には適さない例が少なくない.施設間に差があるものの,想定外に染色体解析や,標本の保存状態が不十分であったことが,解析の遅れの一因にあげられた.
本検討でも,凍結標本の保存がなく,FISH法,免疫組織化学的染色法でALK転座が証明されていながら,5’RACE法による解析を断念せざるを得ない例があった.今後の安定的かつ継続した解析のため,FFPE切片からRNA,DNAを抽出する系の確立と,次世代シークエンサーによる全ゲノムシークエンス法(WGS)を応用した転座解析系の新規樹立と確立を行い,現在は概ね順調に解析が進んでいる. 本解析でも,1 例でWGSを応用した転座解析をすすめ,A2M-ALK転座を同定した.
解析結果から,FLITの疾患特異的転座がA2M-ALKである可能性が高いことを考慮し,現在FISH法による転座解析系の樹立をすすめている.

今後の研究の推進方策

FLITは,新規分類・報告された稀な新生児間質性肺腫瘍で,病理学的類似性から,新規例を除き,依然診断が混沌としている状況にある.ALK関連腫瘍としての疾患の理解とともに,今後報告数は増加すると推察され,引き続き解析症例の登録を継続していく.
登録症例には,G-Band法による解析が省略されていたり,標本の保存状態が不十分である例が含まれる.様々な標本からの解析に適宜柔軟に対応できるように,当初の計画にある5’RACE法以外に,新規確立したFFPE切片からRNA,DNAを抽出する系と,次世代シークエンサーによる全ゲノムシークエンス法(WGS)を応用した転座解析系とを,標本の保存状態に合わせて適用して解析を継続していく予定である. 現在,5’RACE法とWGSを応用した新規解析系を併用し,概ね順調に解析可能となっている. 本解析で, 2例に新規融合遺伝子A2M-ALK転座を同定できたことから, 現在,FISH法による簡易解析系の樹立を進めている.
今後は,5’RACE法とWGSを応用した新規解析系, FISH法による解析系の併用で新規融合遺伝子の同定を進めながら,本年度の当初の予定の免疫組織学的ALK融合遺伝子の発現解析,in vitro 強制発現系の構築と腫瘍化メカニズムの解析を並行して行っていく.
免疫組織学的ALK融合遺伝子の発現解析では,Onodaらの方法に準じ,ALK融合遺伝子のパートナーの違い,切断点,融合部位の違いによる発現様式,細胞内局在の特性を詳細に検討していく.in vitro 強制発現系の構築と腫瘍化メカニズムの解析では,293T細胞株に新規融合遺伝子をトランスフェクトし,in vitroで強制発現させ,Oncoproteinとしての特性,融合遺伝子の発現,細胞内局在を分子レベルで解析し,腫瘍化のメカニズムを解明する.

次年度使用額が生じた理由

理由:
提供された標本の保存状態が不十分であったため,5’RACE法による解析を断念せざるを得ない例があった. 当初,5’RACE法で使用予定だった予算を,今後の安定的かつ継続した解析のため,FFPE切片からRNA,DNAを抽出する系の確立と,次世代シークエンサーによる全ゲノムシークエンス法(WGS)を応用した転座解析系の新規樹立に使用するため,次年度に繰り越す必要があった.WGSによる解析系の費用負担と,後の研究遂行に必要な費用への再配分を考慮し,代替案としてFISH法による転座解析系の構築を先行させたため,次年度に当該負担額を繰り越しす必要性があった.
使用計画:
FFPE切片からRNA,DNAを抽出する系の確立と,次世代シークエンサーによる全ゲノムシークエンス法(WGS)を応用した転座解析系の新規樹立, FISH法による新規融合遺伝子A2M-ALKの簡易検出系新規樹立に使用予定である.

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公開日: 2018-12-17  

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