研究課題
本研究は、出生コホート研究によって発症を観察できる乳幼児アトピー性皮膚炎に焦点を当て、microRNA(miRNA)発現の個体差による遺伝子転写後制御の違いから、乳幼児アトピー性皮膚炎の新たな発症病態を解明することを目的としている。平成27年度は、先行研究において1才時のアトピー性皮膚炎の発症と関連していた3種類のmicroRNA(ADmiRs-HR)の発現を、現在進行中の「一般小児出生コホート」の臍帯血および生後9か月の血清、「アレルギーハイリスク児出生コホート」の1才および2才の血清で検討する予定であったが、さらに「アレルギーハイリスク児出生コホート」の3才の血清の解析も可能となったため、追加検討することにした。当初計画よりもサンプル数を増やしたため、平成27年度は上記の全ての血清からのRNA抽出およびmiRNAのcDNA合成を行った。Real-time PCRによるADmiRs-HR発現の解析は、平成28年度に行う予定である。医師によるアトピー性皮膚炎の診断と重症度評価は終了し、アレルゲン特異的IgE検査などの臨床データの収集は終了している。「アレルギーハイリスク児出生コホート」では、1才時の評価対象269名中アトピー性皮膚炎の児は41名(15.2%)、平均血清総IgE 45.5±84.4 IU/ml、平均ダニ特異的IgE 0.47±1.69 U/ml、2才時の評価対象256名中アトピー性皮膚炎の児は39名(15.2%)、平均血清総IgE 126±328 IU/ml、平均ダニ特異的IgE 7.20±51.6 U/mlであった。平成28年度にADmiRs-HR発現との関連を検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、「一般小児出生コホート」の臍帯血および生後9か月の血清、「アレルギーハイリスク児出生コホート」の1才および2才の血清の、microRNA発現を検討する予定であったが、さらに「アレルギーハイリスク児出生コホート」の3才の血清が加わったため、全てのサンプルのcDNA合成まで行い、microRNA発現は平成28年度におこなうことになった。
出生コホート研究のサンプルを用いて、1才のアトピー性皮膚炎の発症と関連することが明らかになったmicroRNAが、アトピー性皮膚炎の病態に重要な細胞において、遺伝子発現および細胞機能に関わるかを検討する。解析する細胞としては、表皮角化細胞、皮膚線維芽細胞、樹状細胞を予定している。標的遺伝子の発現はreal-time PCRにより解析する。細胞機能の変化の検討は、使用する細胞により異なるが、例えば皮膚線維芽細胞からのTGF-βの発現量であれば、ELISAによる測定および産生されるTGF-βにより制御性T細胞の誘導能を解析する。
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