研究課題/領域番号 |
15K09639
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
長澤 正之 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 非常勤講師 (90262196)
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研究分担者 |
西村 良成 金沢大学, 大学病院, 講師 (50324116)
松本 雅則 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60316081)
矢部 普正 東海大学, 医学部, 准教授 (70220217)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | PRDX2 / Calpain / 酸化ストレス / Band3 / トロンボモジュリン / microparticle |
研究実績の概要 |
GVHDの患者赤血球にband3の低下とPRDX2のC末端部の断片化のみられることを示したが、その機序について検討を加えた。ペプチドマッピング解析を進め、PRDX2切断点がC末端のアミノ酸157以降であることが示された。さらに蛋白分解酵素のデータベース解析を行い、この部位にCalpainによる切断点があることが判明した。そこで臨床サンプルを解析し、PRDX2の断片化とCalpainの活性化が一致していることが判明した。最近の報告でCalpain活性化がband3の発現低下をきたすとの報告がなされたことから、酸化ストレスによりPRDX2がダイマー化し、赤血球膜に移動、酸化ストレスにより活性化されたCalpainによりband3の発現低下とPRDX2の断片化がおこると考えられた。Band3低下とPRDX2の断片化は赤血球の可塑性の低下、酸素運搬能の低下、NO産生低下が生ずることが示されており、これらの変化が循環不全や凝固亢進につながる悪循環が形成されることが推定された。この知見は、今後Calpainの制御がGVHDの治療の標的になる可能性を示唆すると考える。T細胞由来microparticleのELISA測定系を確立した。CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞からのmicroparcile産生に相違があり、各々の活性化状態を把握する指標としての有用性が考えられた。更に、Jurkat細胞を用い、活性化とapoptosisによるmicroparticleが0.22μmフィルターにより分離できる可能性を示した。可溶性トロンボモジュリンが重症のEBV-HLHの治療に有効である可能性を示し、報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
造血細胞移植における酸化ストレスの新たな評価法やその原理、またトロンボモジュリンの効果を解析する手法の開発は順調に進んでいる。今回、酸化ストレスの指標としてCalpainが重要な役割を果たしている可能性がわかったことは重要と考える。またマウスモデルによる検討もほぼ予定通り進んでいる。しかし、ヒトにおける臨床効果とその解析を目指す臨床研究の開始が遅れており、その領域の研究が進んでいない、という問題がある。現在、臨床計画の実施に向けた最終の調整を進めており、今年度中に研究開始ができることを目指している。
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今後の研究の推進方策 |
CalpainやT細胞由来microparticleがヒトの造血細胞移植におけるGVHDとどのような関係にあるのかについて臨床検体を用いて解析を進める。また、トロンボモジュリンがそれらにどのように影響を与えるかについて、ヒト臨床検体やマウスGVHDモデル系を用いて検討を進め、GVHDの新たな評価指標や治療戦略の開発につなげるよう研究を進める。ヒト臨床におけるトロンボモジュリンの有効性を検討する解析については、臨床計画実施に向けた手続きを臨床研究支援機関と綿密に検討を重ね、今年度中の研究開始ができるよう努力してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回の科研費申請確定が半年遅れたこと、また申請額が十分支給されなかったことから当初の研究計画の遂行について修正する必要が生じた。いくつか試薬については他の研究費からの支出で賄ったため、本年度における購入を控え、次年度に検討することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度への繰越金額は少額であり、研究の遂行計画に大きな変化はない。必要な消耗品の購入に充てる予定である。
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