研究実績の概要 |
私たちは、最近、先天性の小頭症、成長障害、免疫不全症、赤芽球癆を呈する男児を経験した。既知の原因遺伝子変異はなかった。末梢血単核球ゲノムのp53遺伝子解析(弘前大学小児科、伊藤悦郎先生、京都大学、小川誠司先生と共同研究。未発表)でヘテロ変異(p.Ser362AlafsX7, c.1279delA)を見いだした。この変異により、p53蛋白は機能が亢進し、患者でみられた症状が生じると予想した。 ヒトではp53CTD変異の報告は、私たちが調べ得た限りでは未だない。ヘテロ体で骨髄症状を示した遺伝子改変マウスは存在しない。 私たちは、今回、高度骨髄機能不全患者で見出したC末欠失によるp53機能亢進型変異(p53CTD)と同等のp53変異を持つマウスを遺伝子編集技術により作成した(山梨大学・若山 照彦教授と共同)。私たちの患者とp53CTD/WTマウスはともにC末端から32番目に位置するセリンを欠失している。p53CTD/WTマウスはp53異常活性化の特徴である手足の高度色素沈着に加え、末梢リンパ球著減と大球性貧血を示し、さらに3 Gyの全身放射線照射後10日で高度な貧血が生じ、その後短期間で死亡した。p53CTDのマウスヘテロ体で初めて血液学的異常を発見した。同時にp53CTDを導入したK562培養細胞・患者由来iPS細胞(京都大学・中畑龍俊教授と共同)の樹立にも成功した。
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