研究課題/領域番号 |
15K09646
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
石川 貴充 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (30402283)
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研究分担者 |
岩島 覚 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (20362197)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 川崎病 |
研究実績の概要 |
川崎病による強い血管炎は急性期炎症が鎮静化した後も存在し、早期動脈硬化の発症と進展に関わりがある可能性が以前より指摘されてきた。成人期に達した川崎病既往例では冠動脈に硬化性内膜肥厚病変が認められ、血管内皮機能障害や慢性炎症の所見とともに酸化ストレス負荷状態にあると考えられている。一方で近年、酸化ストレスと血管内皮機能障害との関連が示唆されている。川崎病後の血管内皮機能に関してこれまで発表されてきた報告は「遠隔期」症例に関するものがほとんどであり、川崎病発症後5年以内の症例に関して血管内皮機能と血管内皮形態を同時に評価した報告は皆無であった。我々は平均年齢6.5歳川崎病既往症例24例と健常者22例に対し、FMD(Flow-mediated dilatation)やIMT(intima-media thickness)計測などを用いて血管内皮機能と血管内皮形態を比較検討し、すでに川崎病発症後5年以内には血管内皮形態の変化に先行し血管内皮機能障害が存在することを見出した(Ishikawa T et al. J Pediatr 2013)。以上の結果から、川崎病では急性期の強い汎血管炎に伴う血管内皮障害がその後も残存し、早期動脈硬化発症の危険因子となる可能性が考えられた。動脈硬化の発症・進展には血管内皮障害、炎症、酸化ストレスの3者による悪循環が関与していると考えられている。しかし川崎病発症後の若年小児に関して炎症マーカーや酸化ストレスを評価・検討した報告はこれまでにない。本研究では上記3者の相互関係を探り、川崎病発症後における早期動脈硬化のメカニズム解明を目指す。平成27年度は川崎病発症後5年以内の症例(冠動脈後遺症なし、冠動脈後遺症あり)と健常対照合計20例に対し血液検体保存、炎症マーカー・酸化ストレスマーカーの測定、FMDを含む血管エコーを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった川崎病発症後5年以内の症例(冠動脈後遺症なし、冠動脈後遺症あり)と健常対照に対し炎症マーカー・酸化ストレスマーカーの測定、血管エコーを行い基礎データの収集を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降1) 若年者川崎病既往例における炎症マーカー・酸化ストレスマーカーと血管内皮機能の測定、2) 川崎病既往例における血管内皮機能障害・動脈硬化の進展度の解析、3) 血管内皮障害の有無で分類した川崎病患者の急性期治療内容、臨床経過の比較検討を予定している。 現時点では目標症例数には及ばないものの、症例の蓄積については今後も対象のリクルートとエントリーを進めると共に必要に応じ内外の研究者および関連病院のネットワークも活用し症例の紹介を依頼してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては基礎データの蓄積が優先され、検体測定のための消耗品に係る費用が想定よりも少なく推移した。加えて学会発表等の費用が必要なかったため予定額との差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
酸化ストレスマーカーの測定、外部機関への検体測定依頼による費用、学会発表等の旅費により使用される予定である。
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