研究課題/領域番号 |
15K09648
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西尾 信博 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00586430)
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研究分担者 |
中沢 洋三 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (60397312)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | キメラ抗原受容体 / 骨肉腫 |
研究実績の概要 |
1)本研究は、がんの新たな免疫療法として期待されているキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法を、従来の治療方法では治せない骨肉腫患者の新規治療法として開発するための基盤研究である。 2)本研究では、キメラ抗原受容体遺伝子を遺伝子導入する方法として、ウイルスベクターより安全性の高いとされている非ウイルスベクターであるpiggyBacトランスポゾン法を用いた。 3)我々は持っているpiggyBacトランスポゾンベクターを改変し、IGF-R1特異的キメラ抗原受容体(IGF-R.CAR)トランスポゾンベクターを作製した。 4)このベクターを用いてIGF-R.CAR-T細胞の作製、培養を行うことができるようになった。IGF-R.CARトランスポゾンベクターとpiggyBacトランスポサーゼ発現ベクターを末梢血単核球にエレクトロポレーションによって遺伝子導入し、その後サイトカインを添加した培地で約2週間培養することにより、IGF-R.CAR-T細胞を作製することができるようになった。 5)piggyBacトランスポゾンベクターを使用した遺伝子導入における、遺伝子導入効率を上昇させる培養方法の検討を行った。その結果、CARのT細胞への遺伝子導入効率を従来の培養方法と比較して大幅に上昇させ得る培養方法を開発した。本培養方法は従来のトランスポゾンベクターの弱点とされていた遺伝子導入効率の低さを克服しえる重要な発見であった。今後の研究では本培養方法を用いてIGF-R.CARの培養を行う予定である。 6)3種類のヒト骨肉腫由来細胞株を用いてIGF-R1およびIGF-R2の発現をフローサイトメトリーで解析したところ、3種類ともに両受容体の細胞表面上への高い発現を認めた。これら受容体を発現する腫瘍細胞はIGF-R.CARを遺伝子導入したT細胞の標的となり得ると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)使用予定のベクターの作製に時間がかかったが作製に成功した。 2)遺伝子導入効率を上昇させるための培養方法を検討して計画当初よりも導入効率を上昇させた。 3)上記に時間がかかったため、CAR-T細胞の機能解析がまだ十分に行えていない。 4)遺伝子導入に用いるベクターおよび使用する細胞株が得られたため、今後の研究に進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1)我々が確立した培養方法を用いて、IGF-R.CAR-T細胞を作製していく。 2)IGF-R.CAR-T細胞のIGF-R.CARの発現率、CD4/CD8、CD45RA/CCR7などの発現を解析する。 3)IGF-R.CAR-T細胞の抗原特異的細胞傷害性を、IGF-R発現骨肉腫細胞株を用いて検討する。 4)IGF-R.CAR-T細胞のインターフェロンやインターロイキン産生能を検討する。 5)免疫不全マウスにIGF-R発現骨肉腫細胞株を皮下移植し、ヒト骨肉腫モデルマウスを作製し、IGF-R.CAR-T細胞を輸注することで、IGF-R.CAR-T細胞が生体内で腫瘍の増殖を抑えることができるかの検討をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席予定であった学会に体調不良により出席不可となってしまったために旅費が少なくなった。 また、プラスミドの作成と培養方法の確定が予定よりやや遅れたため、予定していた機能解析ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度は2回の海外学会出張を予定しているため、旅費として使用。 また、昨年度に実施できなかった機能解析実験のための物品費として使用。
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