研究実績の概要 |
白血病微小環境におけるN-カドヘリン分子の役割を解析し、同分子の白血病薬剤感受性への影響について検討することを目的に研究を実施した。 1)H27年度は、急性白血病細胞株と小児急性白血病細胞初発時検体でのN-カドヘリン分子の発現を確認した。H28年度は、小児急性骨髄性白血病(AML)初発時15検体で同分子の発現をフローサイトメトリー法で測定することができた。CD34陽性CD38陰性芽球(いわゆるAML幹細胞)とそれ以外のサブセット間での同分子の発現の差を確認した。 2)標的遺伝子改変細胞株(RNAiによるノックダウン法)を用いた実験では、BMSC (bone marrow stroma cell)株では1年間にわたる長期培養においても形態、細胞増殖速度及び標的分子発現に変化を認めなかった。一方で、白血病細胞株(697)でのノックダウン遺伝子改変細胞株では、継体培養を繰り返す際に、同分子の発現に変化を認めたため、段階希釈によるsingle cell sortingを実施し、H29年度に樹立できた。 そのため、標的分子の発現の異なるBMSCと白血病細胞株を用いた共培養系に抗がん剤を投与した殺細胞実験(cytotoxicity assay)を実施できなかった。 3)N-カドヘリン分子の白血病治療薬への影響を検証する実験では、N-カドヘリン分子を発現する白血病細胞株(697)に、N-カドヘリンブロッキング抗体を添加することで、ALL治療薬(プレドニン、L-asparaginase, Vincristine, Methotrexate)の殺細胞効果をFCMにて検討した。その結果、プレドニンのみがN-カドヘリンに影響されることが示された。 尚、上記2)の標的分子発現の異なる恒久的細胞株樹立に時間を要し、目標の研究をすべて遂行することができなかったため、今後 同細胞株を用いて実験を実施する。
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