研究課題
進行神経芽腫の予後は不良であり、新しい治療法の開発が強く望まれています。一方、ポリオウイルス(以下PV)は小児麻痺の原因ウイルスで、ポリオウイルスレセプター (以下CD155)を介して脊髄の前角細胞に感染し、アポトーシスを誘導することにより運動神経麻痺を発症します。こうしたPVの神経細胞に対する親和性に着目し、我々はPVを神経芽腫の治療に応用しようと試みてきました。これまで我々は、マウスを用いた研究でPVは神経芽腫細胞に対して強い抗腫瘍活性を持ち、マウスに移植した腫瘍が消失する事を報告してきました。さらに驚いたことに神経芽腫をPVで治療することで抗腫瘍免疫が誘導されることが示唆されました。今回我々は抗腫瘍免疫獲得の機序の解明を目指しました。まず、CD155が抗腫瘍免疫の標的分子か否かの検討を行うため、PVの中和抗体を獲得後に右側腹部に1x107のNeuro-2aCD155細胞を皮下移植し、7-12日後に150mm3の腫瘤を形成した時点でSabin1の腫瘍内投与を1週間毎日行いました。その後180日間腫瘍サイズをモニターし、腫瘍再発を認めないマウスの左側腹部に1x107のNeuro-2aCD155細胞を移植した後2ヶ月間腫瘤形成の有無を経過観察しました。90%のマウスが180日間の経過観察中に再発を認めず、1st tumor-rechallengeの後に腫瘤形成したマウスは一例も認めませんでした。腫瘍再発を認めないマウスの腹部に1x107のNeuro-2a細胞を移植(2nd tumor-rechallenge)しましたが、すべてのマウスで腫瘤形成は認められず、CD155が抗腫瘍免疫の標的分子になっていないことが明らかになりました。
2: おおむね順調に進展している
現在まで予定通りに研究を施行し、仮説通りの結果が得られているため、おおむね順調に進展していると考えられる。
ポリオウイルスが神経芽腫に感染することによって作られる、どの物質(タンパク)が抗腫瘍免疫を惹起するか同定する研究が必要となる。多くのタンパクの中から、目的のものを見つけるのは困難が予想される。新規物質の同定に長けている施設との共同研究を計画している。
これまで申請者らは、ポリオウイルス(PV)は神経芽腫細胞に対して強い抗腫瘍活性を持ち、PVで神経芽腫を治療することにより、抗腫瘍免疫が誘導されることを証明しました。抗腫瘍免疫を誘導する因子(抗原)は、PVが神経芽腫細胞に感染し細胞死が誘導される過程で合成される可能性が高いと考えられます。申請者はPV感染により細胞死を誘導された神経芽腫細胞と、非感染の神経芽腫細胞のそれぞれからmRNAを抽出し、マイクロアレイを用いて遺伝子発現の相違を検討する予定でした。平成27年度中に、上記マイクロアレイを用いた実験を施行できませんでしたので、次年度使用額が生じました。
できるだけ早期に、PV感染により細胞死を誘導された神経芽腫細胞と、非感染の神経芽腫細胞のそれぞれからmRNAを抽出し、マイクロアレイを用いて遺伝子発現の相違を検討します。さらに、発現の相違がみられた遺伝子の中から抗腫瘍免疫を誘導すると思われるタンパクを合成し、そのタンパクでマウスを免疫し、抗腫瘍免疫を誘導するか否かを検討します。
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