研究実績の概要 |
従来、RAEB, RAEBT の治療成績は、造血幹細胞移植なしで化学療法のみでは生存率は30%とされ、造血幹細胞移植が推奨されてきた。一方近年FAB 分類でRAEBT と診断された、芽球比率20%以上30%未満の症例は、WHO 2008 分類では急性骨髄性白血病(Acute myeloid leukemia, AML)と診断された。これを受け、本邦小児の全国的白血病研究グループであるJapan Pediatric Leukemia Study Group (JPLSG)では、従来のWHO 分類のRAEBT 症例27 例について、AMLの化学療法を行ったところ、22 例が寛解に入り、うち10 例のみが移植を行い、6 例生存しているのに対し、移植なしの症例は12 例中10 例生存していた。次に日本小児血液・がん学会(Japanese Society of Pediatric Hematology/Oncology, JSPHO)のMDS 委員会の協力の元、RAEB 例についても後視的解析を行ったところ、データが集まった19 例中寛解導入療法が行われた16 例については、12 例が寛解に入り、うち8 例が移植を受け、7 例が生存、一方移植を受けなかった4 例は全例が生存していた。これらの結果は、RAEBT/RAEB 症例の中にも骨髄移植なしで治癒可能な症例が存在することを示唆した(現在Leuk Res 投稿し、revised中)。 またRAEBT例についてはde novo AMLでみられる、NRAS, KRAS, FLT3, KIT, WT1, NPM1などの遺伝子変異は、de novo AMLでみられるものより明らかに少なく、パイロットで行った、RAEB/RAEBT 3例のターゲットシーケンスによる解析では、GATA3, ASXL1, SETBP1など成人のMDSでみられる変異が見つかっている。 25種類のがん抑制遺伝子のプロモーターのメチル化解析ではRCC 4例、RCMD 2例と正常コントロールではメチル化は見られなったのに対しRAEBT/RAEB 4例のうち3例でESR1ないしCADM1遺伝子のメチル化が共通して見られた。これらの遺伝子のメチル化はAMLでもみられるため、病勢の進展に関与しているものと考えられた。
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