研究実績の概要 |
【背景】報告者らはこれまで亜急性硬化性全脳炎 (Subacute sclerosing panencephalitis: SSPE) 患者の髄液を用いて, 炎症性サイトカイン, 細胞骨格蛋白, 代謝産物など病勢の把握のためのバイオマーカー検索を行ってきたが, 効率, 臨床情報の不足および患者検体が希少であることから, 十分な結果が得られていない. そのため本研究ではプロテオミクスの観点からSSPE髄液蛋白の網羅的な解析について検討する. 【対象および方法】トルコHacettepe大学の協力で得られたSSPE患者1例および疾患対照 (睡眠障害) 1例の診断時髄液を用いた. 蛋白濃縮後, ポリアクリルアミドゲルを用いた二次元電気泳動を行い, 対照と異なるスポットの等電点と分子量を求め, 質量分析を施行した. 【結果】SSPEと対照で計472のスポットが検出された. このうちSSPEが対照より3倍以上高く、視認できる明瞭なスポットは11個検出された. 11個のスポットは等電点10付近で分子量①約160kDa, ②約150 kDa, ③約130 kDa, ④約100 kDa, ⑤約90 kDa, ⑥約50 kDa, ⑦約45 kDa, ⑧約10 kDa, 等電点7.6付近で分子量⑨約10kDa, 等電点6.8付近で分子量⑩約10kDa, 等電点6.5付近で分子量⑪約10kDaであった. このうち質量分析により⑪がDermcidinと推測された. 【考察】Dermcidinはanti-microbial peptideおよびdiffusible survival evasion peptideとしての機能が報告されているため, SSPEの病態への関与が示唆された. 今後検体数を増やし, 検討していく.
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