研究課題/領域番号 |
15K09655
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高田 英俊 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70294931)
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研究分担者 |
石村 匡崇 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10448417)
田中 珠美 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (60423547)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | X染色体不活化 / X連鎖劣性遺伝性疾患 / X連鎖無ガンマグロブリン血症 / Wiskott-Aldrich症候群 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
我々はX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)およびWiskott-Aldrich症候群(WAS)の女性例を同定し、X染色体不活化の著しい偏り(Extremely skewed X chromosome inactivation: ESXCI)を背景に発症することを明らかにした。本研究ではESXCIが起こった機序を解明し、X染色体不活化の解除による治療法の開発に向けた研究を行う。平成27年度は、ESXCIを起こす遺伝的な原因を解明するため、次世代シーケンサーを用いた解析を含む遺伝学的解析を行い、平行してESXCIが起こる機序を解明するツールとして、患者由来iPS細胞の樹立を行った。 X染色体不活化に関連すると考えられているXIST、TSIX、CDX4、CHIC、JPX、FTX、NAP1L2、RLIM、SLC16A2、ZCCHC13を解析したが明らかな異常は認められなかった。次世代シーケンサーを用いたエキソーム解析の結果、女性XLA患者および女性WAS患者間で共通してみられたnon-synonymousかつhomologousな変異は53遺伝子認められた。現在これらの遺伝子の機能的な面から検討中である。女性XLA患者およびその母、女性WAS患者およびその両親の5名を対象としてRNA sequenceの解析も進めている。 女性XLA患者のiPS細胞を樹立した。末梢血細胞にSendaiウイルスを用いてOCT3/4、Sox2、Klf4、c-mycを細胞内発現させることでiPS細胞を樹立した。Teratoma formation assayで3胚葉系への分化能を確認した。XLA遺伝子の塩基配列をサンガー法で調べた結果、同じBTK遺伝子変異を確認できた。iPS細胞を用いてX染色体不活化の状況をHUMARA法で確認した。今後、X染色体不活化の解除に関する研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代シーケンサーを用いたエキソーム解析は順調に進行している。女性XLA患者および女性WAS患者間で共通してみられたnon-synonymousかつhomologousな変異は53遺伝子認められ、そのうちX染色体上の遺伝子は3遺伝子であった。現在これらの遺伝子の機能的な面から検討中である。変異が同定された遺伝子の数が多いこともあり、これまでのところX染色体不活化異常の原因となる因子の同定には至っていない。1つ1つ原因となりうる候補因子について解析を進めて行く必要がある。また、女性XLA患者およびその母、女性WAS患者およびその両親の5名を対象としてRNA sequenceの解析も進めており、遺伝子発現量の変化を中心に解析を進めている。 iPS細胞の樹立も順調に進行している。女性XLA患者のiPS細胞を樹立した。iPS細胞を用いてX染色体不活化の状況をHUMARA法で確認し、今後X染色体不活化の解除に関する研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
樹立したiPS 細胞をいろいろなGrowth factor の存在下に長期培養し、X 染色体不活化の変化を評価する。特にLIF については、いろいろな濃度で検討を行う。エキソーム解析やRNA-Seq 法、あるいは薬剤スクリーニングで、X 染色体不活化に影響を及ぼす可能性のある分子が同定されれば、iPS 細胞にそれらの遺伝子を導入したり、あるいは遺伝子発現を抑制することにより、その機能を直接評価する。不活化されているX染色体にGFP を導入し、不活化が解除されるような薬剤をスクリーニングする。X 染色体不活化を制御する遺伝子や、薬剤を同定できれば、患者造血細胞由来のマウスモデルを用いて、X 染色体不活化の制御による疾患治療の方法確率に向けた研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は経費のかかることが予想されていたため、できるだけ経費を使わないように工夫・努力した。また、研究に必要な試薬がまだ残っていたものがあったため、できるだけそれを使用した。結果的に、新たに購入する必要がなかった消耗品が、たまたま多かった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究が予定通り進んでおり、今後、iPS細胞の培養など、経費のかかる研究内容に展開していくため、来年度に研究費を繰り越すことが、研究全体の推進のために適切であると判断した。
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