研究課題/領域番号 |
15K09662
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
松井 英人 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (00571027)
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研究分担者 |
杉本 充彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (80192128)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 血友病 / 遺伝子治療 / 細胞治療 / ベクター |
研究実績の概要 |
血友病遺伝子細胞治療に対する新しい遺伝子導入ツールとして非ウイルス型のpiggyBacトランスポゾン由来のベクターを開発し、臨床応用へ向けた有効性を確認する。本ベクターは従来のウイルスベクターの様な封じ込めP2レベルでの取り扱いが不要で、ウイルス由来タンパク質に対する免疫応答のリスクも少ない。目的細胞に転移酵素と同時にプラスミド導入を行うという簡便な操作で、安価に高効率で目的遺伝子の挿入ができるプラスミドDNAベクターである。これまでのウイルスベクターでは不可能であった、大きなサイズのcDNA全長を導入できる革新的なシステムで次世代型血友病遺伝子細胞治療法の確立を目指してきた。その結果これまでに、 ①iPS 細胞からFVIII生産細胞への分化誘導を検討した。FVIIIの分泌生産に適した細胞種マーカーを指標に、健常人iPS 細胞および血友病患者由来iPS 細胞を目的の細胞種へと分化誘導を行った。その結果改良型FVIIIを発現するDox 応答型piggyBac ベクターの構築に成功した。 ②半透膜デバイスによる高機能獲得型FVIII発現の検討 水溶性分泌タンパク質であるFVIIIは透過するが、数十μm を超える細胞は透過しない1-2μm の孔径をもつ生体親和性のポリエチレンテレフタレート膜でデバイスを作成し、FVIII生産細胞を内部へ封入する。可溶性栄養分の流入やFVIII 分泌を効率化するために、表面積を広くした円盤状の新規開発デバイスであり、培養皿上で長期にわたりFVIIIの分泌効率および、生産細胞の生存を観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在分化細胞に導入して、従来型との分泌量比較実験を行っている。また血友病Aマウスの背面皮下にデバイスを移植し、市販のTheraCyte デバイスとの比較、およびデバイスの有無においてFVIIIの血中生産量、中和抗体の生成、および発現期間を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
血友病遺伝子細胞治療をさらに安全に臨床応用するには、ウイルスベクターを使用せずに患者自身の細胞へFⅧを効率よく遺伝子導入し、持続して発現させることができるベヒクル細胞を大量に作製する方法を確立する必要がある。そこで、構築したpiggyBacトランスポゾン由来のFⅧ発現ベクターを血友病患者由来のヒトiPS細胞へ導入し、FⅧ遺伝子発現を検討する必要がある。また、FⅧを導入したiPS細胞を様々な細胞へ分化誘導することで、FⅧがどの細胞で効率よく発現し分泌することが明らかになれば、細胞治療に必要なベヒクル細胞を患者iPS細胞から無限大に大量に作製することが可能となる。将来的には、自己細胞を用いることで移植に伴う免疫応答を完全に回避できる新しい血友病遺伝子細胞治療法を創出することにつながる。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入費のうち海外からの輸入品が為替レートの影響で予想より安く購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に繰り越して使用する予定である。
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