血液凝固第VIII因子(FⅧ)は主に肝臓の類洞内皮細胞で産生されていることが知られている。FⅧは巨大なタンパク質で、切断や糖鎖修飾など、複雑な翻訳後修飾を経て、ER経路を経て分泌される。その為、未熟な多能性幹細胞よりも、ER経路がより発達した肝臓細胞や血管内皮系細胞の方が基本的にはFⅧの分泌が高いことが期待される。そこ で、さらに優れたFⅧ産生細胞がないか検討するために、FⅧを恒常的に発現しているiPS細胞を、EB(胚様体)形成を経てランダムに三胚葉由来の細胞群へ分化さ せ、FⅧを高発現している細胞群を免疫染色後にソートし、ERマーカーや細胞表面マーカーから、どの様な細胞種においてFⅧの発現が高いか探索を行った。 最後に血友病Aマウスモデルで細胞移植実験を行う。温度応答性細胞回収培養皿(セルシード社UpCell)を使いFⅧを発現する細胞シートを作製しマウスの皮下へ移植す る。細胞シートは生体内移植後の機能的接着に有効であるとともに、外来性マトリックスを使用しないため移植に伴う炎症を少なく押さえることが可能である。 細胞移植実験後の治療効果は、①抗第Ⅷ因子抗体(インヒビター)産生量のELISA測定、生体内での免疫応答を確認するための②サイトカインアッセイ(IL-6 TNF-αなど)、③T細胞増殖試験、制御性T細胞誘導試験(FⅧ特異的制御性T細胞発現誘導の検討)などを行い、免疫寛容成立のメカニズムを詳細に検討する。また 同時に、実験によって起こり得る副反応等も慎重に観察する
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