研究実績の概要 |
平成29年度は、バイパス止血製剤によるFVIII活性化(不活化)におけるインヒビターの影響を包括的凝固機能により解析した。健常人または血友病A患者の全血に抗FVIII抗体を添加し、後者には、更にrFVIIIを添加して、後天性血友病Aまたはインヒビター保有中等症・軽症血友病Aモデルとした。これらにバイパス製剤を添加し、凝固反応初期相のFVIII活性化反応を、ROTEMを用いてより生理的条件下で評価した。結果、バイパス製剤をFVIII存在下で添加時には、単独添加時に比して凝固開始時間がより短縮し、インヒビターエピトープに関わらずFVIIaによりFVIIIは活性化することをより生理的条件下でも証明した (Nogami K, Yada K et al. BJH.181,2018)。 <研究期間全体> ・FVIIa/FX複合体製剤(FVIIa/X)はインヒビター存在下でFVIIIの活性化・不活性化反応を惹起しrFVIIaに比して相乗的に凝固機能を増強することがわかった。 ・軽症・中等症血友病AにおけるFVIIIの凝固機能及び免疫原性とF8遺伝子変異との関連について検討した。当教室で経験した世界初の変異(P1809L)は、変異とは離れたドメインでPL及びVWFとの結合障害によって軽症血友病Aを発症し、自己と非自己のFVIIIを区別するインヒビター発生に関連することを証明した(Yada K. et al, JTH 13,2015)。 また、インヒビター発症軽症血友病Aとして報告例の多いArg593Cys変異では、C2ドメインにおける構造変化をきたし、PLとの結合親和性が低下することを報告した(第37回日本血栓止血学会)。さらに、FVIII(a)のFXase複合体における補酵素作用に着目し、軽症・中等症血友病A患者の血漿を用いた多元的な凝固機能解析手法を開発した(第58回米国血液学会)。
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