研究実績の概要 |
脂肪由来間葉系幹細胞(Adiposed tissue-derived stem cell : ADSC)は未だその生物学的特性は未知であるが,少ない侵襲で骨髄由来の間葉系幹細胞に比べて大量の幹細胞を採取でき、注目されている。骨髄不全症などで脂肪幹細胞が移植後の造血回復にどの程度関与するか評価し、造血幹細胞移植に組み合わせて移植成績の向上につなげることが可能であるかを課題とした。ADSCを移植時に造血細胞と併用して投与しin vivoでは移植後の免疫応答がどうなるかの解析を試みた。in vitroでの安定した脂肪組織間葉系幹細胞を樹立に難渋したが、作成効率やコンタミなどで苦労し改良により2年目からは安定して作成できるようになった。その細胞の解析を進めるとともに、3年目からはin vitroの実験に加え、マウスから樹立した脂肪幹細胞で動物実験に移行することもできた。移植後の造血回復へのADSCの関与に関しては結局実験系の確立に難渋し示せなかったものの、マウス血管炎モデルを使用したADSC移植実験でADSCが造血回復の際に血管炎の抑制に寄与することを示せた。造血回復時の末梢血解析と皮膚GVHDや血管炎の状況を検討し、レシピエントマウスから得た検体をサイトカインアレーをもちいて炎症性サイトカインの動きを定量し、血管・心筋・骨髄組織の病理学的評価をおこなった。その結果、これまでの報告でADSCには抗炎症・免疫抑制作用・組織修復作用を持つことが指摘されていたが、モデルマウスの解析からADSCはIL-17やTNF-αなどの炎症関連サイトカインを抑制することによって冠動脈などの大動脈での炎症を改善し、ADSCは血管炎モデルマウスに対して抗炎症効果を認めることが証明できた。
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