研究課題
本研究では、食物アレルギー(FA)の経口免疫療法(OIT)中の患者を対象に、FAの発症と耐性獲得の機序について検討した。本年度は、引き続き、「抗IgE抗体療法併用による、牛乳アレルギーに対する経口免疫療法の、有効性と安全性の改善効果を検討するためのパイロットスタディ」の参加者を対象に、好塩基球活性化試験(BAT)等の免疫学的パラメーターの推移を解析した。症例1(6歳男児)は、開始直前の負荷試験では、積算誘発域値1.5mlであったが、免疫療法開始後4か月で100mlの維持量に達し、1年後の確認試験では2週間の除去期間をおいても200mlの摂取が可能であった。一方、直前の負荷試験で、積算誘発域値2.1mlの症例2(7歳男児)、0.1mlの症例3(6歳男児)は、免疫療法開始後4か月で、それぞれ、7ml、20ml摂取可能になったものの、その後誘発症状が頻発し、それぞれ3ml、0.5mlの微量での維持となった。症例1と症例2、3を比較すると、治療前の時点で症例1は牛乳異的IgEが1.14UA/mL、好塩基球活性化試験(BAT)の陽性域値も0.1㎎/dlと、免疫学的には比較的軽症であったのに対し、症例2、3は、牛乳異的IgEがそれぞれ47.1UA/mL、45.2UA/mL、BATの陽性域値が両者とも0.001㎎/dlと重症であった。抗IgE抗体使用後、症例1では好塩基球活性化がほとんど消失したのに対し、症例2、3では変化せず、特異的IgEの少ない症例1では、抗IgE抗体により十分な阻止が可能であったが、症例2、3では阻止しきれなかったものと推測される。抗IgE抗体終了後、症例1ではBATが増強したが、その後再度低下し、免疫療法による効果と考えられた。症例2、3では抗IgE抗体使用中も十分な抑制を達成できず、誘発症状が起きてしまったため、十分量による免疫療法が行えなかったと考えられた。
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