研究課題/領域番号 |
15K09671
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
栗林 太 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60251443)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 活性酸素 / NADPHオシキダーゼ / 慢性肉芽腫症 |
研究実績の概要 |
生体への病原微生物の侵入に対する初期防御として好中球は重要な役割を担う。好中球は細菌や真菌などの病源微生物を貪食して殺菌するが、この殺菌を行うために活性酸素を産生する。活性酸素は酸素分子に電子を還元することにより発生させるが、反応性が高いので人体にも有害に作用する。そのため、貪食時に発生する活性酸素は厳密に調整されており、感染等がない場合には、好中球は活性酸素を産生することはない。一旦、細菌を認識し、接着、貪食を行うと、その刺激により好中球は初めて活性酸素を産生する。このときの電子供与体は細胞内のNADPHであり、貪食胞の中、即ち、細胞膜の外側に位置する細菌の殺傷のために、電子を膜通過させスーパーオキサイドアニオンを発生させる。この電子伝達を担う膜タンパク質を食細胞NADPHオシキダーゼといい、申請者等はこれまでこのタンパク質複合体の活性化機構を明らかにしてきた(Kuribayashi et al., EMBOJ 2002, Genes to Cells 2008他)。慢性肉芽腫症(CGD)は、NADHPオキシダーゼ複合体の構成遺伝子の異常疾患であり、CGD患者は細菌真菌感染を繰り返す。NADPHオキシダーゼを細胞外から認識し、結合するモノクローナル抗体(7D5)はCGDの診断に汎用されてきたが、これまで認識部位の詳細は分らなかった。申請者はCGDの診断と治療のための基礎的データの提供を目的として、これまで7D5の抗原の認識部位に着目して研究を行ってきた。即ち、CGD好中球の中には7D5で認識される場合と認識不可能な場合が存在したが、mRNA作成過程のスプライシングとの関係を明らかにしてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで既に公表されているCGD由来の遺伝子変異の中にはmRNAのスプライス異常を伴う可能性がある。そこで、申請者はそのことを現在調査しており、いくつかのスプライス変異を発見した。現在、これらのアッセイ系の確立を行っている。また、7D5の結合部位の詳細を決定する目的で、培養細胞におけるNADPHオキシダーゼの発現系を確立した。現在、変異タンパク質の発現を行い、結合部位の解析を行っており、本研究課題の進捗状況はほぼ計画通りと考えている。これらの研究遂行のために、遺伝子の配列の解析が必須であるが、その実験は当研究室の技術職員が行っている。そのために人件費が増額した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに申請者等が明らかにしてきたmRNAスプライス異常の仕組みを明らかにすることにより、CGDにおけるDNA上の変異部位とmRNAの関係を明らかにしていく。そのことで、抗菌薬に依存してきた治療方法に新たな可能性を提言したい。また、7D5のエピトープの詳細の決定を行い、CGDの診断と治療に資するデータを提供する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題の研究計画においては、DNAの解析のための支出を予定としておりました。その内、比較的経費の安価な細胞培養やタンパク質の解析を中心におこなったため、次年度使用額が生じました。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と翌年度分請求補助金を合わせて、DNAの解析、特にDNAシークエンサー及びPCR関連試薬の購入を中心に使用する計画です。
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