研究課題/領域番号 |
15K09672
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
原 好勇 久留米大学, 医学部, 准教授 (40309753)
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研究分担者 |
柏木 孝仁 久留米大学, 医学部, 講師 (70320158)
渡邊 浩 久留米大学, 医学部, 教授 (90295080)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | RSウイルス / Pタンパク質 / Lタンパク質 / RNA複製酵素 / ミニゲノムアッセイ系 / ルシフェラーゼ / 抗ウイルス作用 / 欠損変異型 |
研究実績の概要 |
初年度はフランスのEleouet博士に共同研究を申し込み、彼らが構築したパラミクソウイルスの一つであるRSウイルスのミニゲノムアッセイ系を分与頂いた。そこで本研究ではパラミクソウイルスの代表としてRSウイルスをモデルに抗ウイルス薬の開発を行うこととした。このアッセイ系はRSウイルスの内部遺伝子をルシフェラーゼ遺伝子に置き換えたもので、ルシフェラーゼの発光強度を測定することでウイルスの増殖程度を間接的に知ることができる。このアッセイ系で、当初の計画通り「おとりRNA」を作用させウイルス増殖が阻害されるか検討しところ、予想に反し「おとりRNA」の阻害作用が小さかった。そこで当初の計画を変更し、「おとり」として作用しそうな他のウイルスの構成成分4種類(P, N, L, M2-1)に着目した。4種類それぞれについて欠損変異型を作製し、これらを正常型と競合阻害させ、ウイルス増殖を抑えるものがあるかどうか検討した。その結果、Pタンパク質の欠損変異型にウイルス増殖を著しく阻害する効果があることを見出した。そこでPタンパク質に主眼を置き、Pタンパク質をN末側から順次削りこんだ欠損変異型をさらに25種類作製し、どこに阻害活性の中心部があるか詳細に解析を行った。その結果、Pタンパク質のC末側領域3分の1が阻害作用に必須であることが分かった。必須部分の約80アミノ酸はルシフェラーゼ活性を完全に阻害したことから、強力な抗ウイルス作用をもつことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では実験系の確立を目指した。しかし計画通りに進まなかったため、フランスの研究機関へ共同研究を申し入れRSウイルスのミニゲノムアッセイ系を手に入れることができた。2年目からは入手したアッセイ系を正常に当研究室で動かすことができるようになり、「おとりRNA」の抗ウイルス作用を調べることができるようになった。ところが予想に反し「おとりRNA」の抗ウイルス作用が小さかったため、計画を変更せざるをえなかった。しかし計画変更が幸いし、ウイルスの構成成分であるPタンパク質が強力な抗ウイルス作用をもつことを見出した。そしてPタンパク質を集中的に解析し、阻害活性に必須な領域約80アミノ酸を特定することに成功した。2年目でようやく結果が出始め、日本感染症学会(2017年4月)および国際ウイルス学会(2017年7月)で成果発表を行える段階に入ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究で見出した強力な阻害活性をもつPタンパク質は、正常型は通常RNA複製酵素であるLをウイルス遺伝子の場所へ正しく導く働きをしており、Pが存在しなければウイルス遺伝子の転写と複製は起こらない。そこで、阻害活性をもつ欠損変異型Pは正常型Pに結合、あるいはLに結合してその機能を阻害しているのではないかと予測している。今後の研究計画としては、まず欠損変異型Pの阻害作用の機序を明らかにするつもりである。また、現在のミニゲノムアッセイ系はウイルス粒子の産生は起こらない実験系なので、真の抗ウイルス作用を評価するにはウイルス感染実験を実際に行う必要がある。そのために、まず欠損変異型Pを精製する系を確立する。そして精製した欠損変異型Pを用いて、RSウイルスを感染させた細胞に作用させ抗ウイルス作用を評価する。RSウイルスで結果が順調に出れば、他のパラミクソウイルスであるヒトメタニューモウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルスでも検討する。そして最終的に論文にまとめて国際誌に投稿し、また学会で公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額端数のために次年度繰越となった。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度請求分と合わせて当該研究に必要な消耗品に使用する予定である。
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