本研究は新規分化誘導分子 Trim32 が神経芽腫細胞への増殖抑制および分化誘導効果を発揮する際の分子的基盤ならびに分子標的を明らかにし、新しい作用機序による神経芽腫の治療法を確立することを目的としている。 Trim32の過剰発現、あるいはこれに加えて神経芽腫の治療薬である13-cisレチノイドとATRAを組み合わせて細胞分化の誘導を試み、Trim32とATRAまたは13-cisを併用処理した時の遺伝子発現をcDNA microarrayによって解析し、発現が上昇する遺伝子群と低下する遺伝子群を抽出し、これらの遺伝子発現と増殖抑制および分化誘導との関連性をsiRNAによる発現阻害等を行い、薬剤併用処理による増殖抑制および分化誘導に関連しているか否かを検討した。 薬剤処理により、発現上昇した遺伝子として、ABCB1、ADD3、ARHGEF3、CDKN1Aが同定され、一方発現が低下した遺伝子として、IGFB P5、KCTD12、ASCL1が同定された。引き続き、発現上昇した遺伝子については、ノックダウン実験を行い、逆に発現が低下した遺伝子 については、過剰発現実験を行った。その結果、CDKN1Aをノックダウンさせると、ATRAまたは13-cisによる分化誘導能が有意に低下することがわかった。 そこで、神経芽腫細胞に、CDKN1AのcDNA発現ベクターを導入後、ATRAまたは13-cis処理を行うと、神経細胞への分化誘導能が増大することがわかった。
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