研究課題/領域番号 |
15K09675
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
西條 政幸 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (50300926)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 単純ヘルペスウイルス1型 / ヘルペス脳炎 / 新生児ヘルペス / ウイルス性チミジンリン酸化酵素 / 薬剤耐性 / アシクロビル |
研究実績の概要 |
1.私たちは世界で初めて,ウイルス学的に証明されたアシクロビル(ACV)耐性単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)によるヘルペス脳炎(新生児ヘルペス患者)を報告した(Kakiuchi, S, et al. JCM, 2013).その患者の脳脊髄液中に認められたHSV-1のチミジンリン酸化酵素(vTK)遺伝子中のQ125H変異を有する組換え単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)をF株由来BACシステムを用いて当該組換えウイルスを作出した.今後,その組換えウイルスの薬剤感受性と神経病原性を評価する. 2.ACV感受性HSV-1野生株(HSV-1 TAS)から,ACV存在下で培養することにより得られたACV耐性(ACVr)HSV-1から,ACVに対する感受性の異なるACVr HSV-1を6株選択して,ACVr HSV-1のACVに対する感受性と神経(脳内接種)病原性および皮膚(角膜接種)病原性の関連を評価した.ACVr耐性株であっても,親株とほぼ同等の病原性を示す株が存在するとともに,ACVに対する感受性と神経病原性,皮膚病原性の間には正の相関(よりACVに耐性であればより病原性が低い)があることが明らかにされた. 3.ACV感受性HSV-1野生株(HSV-1 TAS)の組換えウイルスを作出するためのBACシステムを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目的とする研究課題,1)ACV感受性HSV-1野生株(HSV-1 TAS)の組換えウイルスを作出するためのBACシステムを構築,2)チミジンリン酸化酵素(vTK)遺伝子中のQ125H変異を有する組換え単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の組換えHSV-1の作出,がなされた.
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今後の研究の推進方策 |
1)今後の研究の推進方策(最大800字) 作出されたチミジンリン酸化酵素(vTK)遺伝子中のQ125H変異を有する組換え単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)は,これまでの研究(Kakiuchi, S, et al. JCM, 2013)では,ACV以外のvTK関連薬剤であるペンシクロビル,ブロバビル,ガンシクロビルに野生株と同等の感受性を示すことが予想される.そこで作出された組換えHSV-1のこれらの薬剤に対する感受性を調べるとともに,マウスにおける神経病原性を評価する.ヘルペス脳炎患者の脳内で出現したACVr HSV-1の性状を解析することで,新生児ヘルペス脳炎患者における病態と治療法のあり方と考察する. ACVr HSV-1の薬剤感受性と神経病原性および皮膚病原性に正の相関があることが明らかにされた.この研究に関する成果を学術論文にまとめる. 2)次年度の研究費の使用計画(最大800字) 消耗品,学会発表等のための旅費,研究遂行に必要な備品等の購入に充てる.
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度の旅費の実績が,計画していた予算より下回ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度の研究計画は概ね順調に進んでいる.H28年度には,「今後の研究の推進方策」の項に記載されている研究課題を着実に遂行する.また,H28年度には研究成果を国内学会だけでなく,国際学会において発表することを計画している.そのためH28年度においては,旅費が計画よりもより多く支出されることが予想される.
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