研究実績の概要 |
1. 私たちは世界で初めて,ウイルス学的に証明されたアシクロビル(ACV)耐性単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)によるヘルペス脳炎(新生児ヘルペス患者)を報告した(Kakiuchi, S, et al. JCM, 2013).その患者の脳脊髄液中に認められたHSV-1のチミジンリン酸化酵素(vTK)遺伝子中のQ125H変異を有する組換え単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)をF株由来BACシステムを用いて当該組換えウイルスを作出した.2016年度には,この変異は実際にACVに耐性を誘導することが証明された.一方,ACV耐性HSV-1による脳炎例として報告(Shulte EC, et al, Annals of Neurology, 2010)で報告されたvTKにおけるアミノ酸変異R41HはACVに耐性を示さないことが,組換えHSV-1を作出してACV感受性を調べることで証明された. 2. ACV耐性(ACVr)HSV-1から,ACVに対する感受性の異なるACVr HSV-1を6株選択して,ACVr HSV-1のACVに対する感受性と神経(脳内接種)病原性および皮膚(角膜接種)病原性の関連を評価した.ACVr耐性株であっても,親株とほぼ同等の病原性を示す株が存在するとともに,ACVに対する感受性と神経病原性,皮膚病原性の間には正の相関(よりACVに耐性であればより病原性が低い)があることが明らかにされた.この研究成果は論文発表された. 3. 造血幹細胞移植患者から経時的に分離されたHSV-1株におけるACV耐性を誘導するvTK遺伝子の変異およびその出現動態を,次世代シークエンス法を導入することにより,分離されたHSV-1のvTK遺伝子塩基配列をサンガー法等で確認する方法に比べて,より詳細に明らかにできることを明らかにした.
|