研究課題/領域番号 |
15K09676
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
内山 徹 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 成育遺伝研究部, 室長 (10436107)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | baboon envelope / レンチウイルスベクター / 安定ウイルス産生細胞株 |
研究実績の概要 |
Baboon Envelopeの細胞内ドメインをマウス白血病ウイルスに置き換えたBaEVTRは、細胞毒性を示さずにレンチウイルス(LV)をパッケージングでき、さらに造血幹細胞に対しても高い感染性を示す。今年度も引き続きBaEVTRを用いたLV産生細胞株の作製を行なった。前年度は自己不活化型(SIN)レトロウイルス(RV)ベクターによりLVの構成遺伝子(gag-pol、rev)を順次導入し、最も高いウイルス力価を示したクローンを選択した(293gpr)。しかし、各構成遺伝子を個別のベクターにて導入したことから、導入配列の欠如によると思われる力価の低下が認められた。そのため、当初の計画の通りに、LVの構成遺伝子(gag-pol、rev)を一つのバキュロウイルス―AAVベクターに組み込み、実験を継続した。293T細胞に対してAAV-rep78発現ベクターをトランスフェクションし、その後にバキュロウイルス―AAVベクターによりAAVS1サイトへの遺伝子(gag-pol、rev)導入を行なった。Hygromycinによる選択後にクローニングを行い、BaEVTR、LVベクタープラスミドのトランスフェクションで最も高い力価のウイルスを産生するクローンを選択した。さらにSIN-RVによってBaEVTRを導入し、puromycinによる選択を行なった。選択後の細胞(293T-gprBaEV)を使用して作製したレンチウイルスはVSV―Gに比べてHela細胞では低い感染性を示した一方で、CD34陽性造血幹細胞では高い遺伝子導入効率を示した。これはBaboon Envelopeの受容体であるASCT1及びASCT2がCD34陽性細胞にて高く発現しているためと考えられ、作製したパッケージング細胞によるRVは造血幹細胞への遺伝子導入に優れていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に作製したウイルス産生細胞は、予想に反して力価の急激な低下が認められた。原因としてLVベクターの構成遺伝子を、別々のベクターにより導入したことが原因と考えられた。この問題を克服するために、当初の計画通りに全ての構造遺伝子(gag-poi、rev)と選択遺伝子(hygromycin耐性遺伝子)をバキュロウイルス―AAVベクターに組み込み導入した。Rep78とともに導入することで、比較的容易に遺伝子導入細胞を得ることができた。現在BaEV-TRまで導入した細胞を作製しており、今後はCD34陽性造血幹細胞へ遺伝子導入を行い、さらにNOGマウスに移植することで、CD34陽性細胞のstemnessの維持に関して評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究によりBaEVを利用したLVベクターのパッケージング細胞(293T-gprBaEV)が完成した。293T-gprBaEVによるウイルスは、ASCT1及びASCT2を発現する細胞に対して、従来のVSV-Gに比べて高い感染効率を示す。また、エンベロープとしての細胞毒性も極めて低いことからも、造血幹細胞への導入には非常に優れていると考えられる。次年度は、遺伝子導入(EGFP)したCD34陽性造血幹細胞をNOGマウスに移植し、長期の遺伝子発現を解析することで、BaEVの使用が造血幹細胞のstemnessを維持できるのかについて判定する。また、同意の下に採取したWiskott-Aldrich症候群患者の骨髄細胞に対して、WAS遺伝子を導入し、同様にNOGマウスに移植することで、実際の遺伝子治療におけるBaEVによるLVベクターの有用性に関して評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
報告書にも記載した通り、前年度に作製したウイルス産生細胞株の力価の低下が認められた。そのため、再度当初の研究計画に沿ってウイルス産生細胞株の作製を実施した。そのため、当初の計画にある実験動物を利用した実験を次年度に行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の計画として、臍帯血から免疫磁気ビーズによってCD34陽性細胞を分離、サイトカインによる培養と遺伝子導入、NOGマウスへの移植実験などを行う。これらに使用する試薬(ビーズやサイトカイン)はいずれも高額であり、またNOGマウスは自己繁殖が禁止されていることからその都度購入する必要がある。研究用臍帯血、免疫磁気ビーズ、サイトカイン、動物飼育費などに次年度使用額を使う予定である。
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