研究課題/領域番号 |
15K09677
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
河合 利尚 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 生体防御系内科部, 医長 (20328305)
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研究分担者 |
小野寺 雅史 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 成育遺伝研究部, 部長 (10334062) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 原発性免疫不全症 / 慢性肉芽腫症 / 自己炎症性疾患 |
研究実績の概要 |
慢性肉芽腫症(CGD)は、NADPHオキシダーゼの活性酸素種(ROS)産生障害により、易感染性と慢性炎症(肉芽腫形成、CGD腸炎(広義の炎症性腸疾患)など)をきたす原発性免疫不全症である。慢性炎症について、いくつかの機序が報告されているが、未だに詳細は不明である。NADPHオキシダーゼは食細胞に発現する複合分子であるため、本研究では炎症を制御する単球/マクロファージの機能解析を行い、CGDにおける慢性炎症の機序について検討を始めた。 H27年度の研究結果から、CGDの慢性炎症は単球におけるROS産生能の低下が関与することが示唆された。H28年度、さらに単球の機能解析を行なったところ、CGDの単球では軽度の活性化が持続し、刺激に対する反応性も亢進していた。そのため、CGDの慢性炎症は、自己炎症性疾患に類似した病態を呈する可能性が示唆された。しかし、CGD患者では約半数にCGD腸炎を合併するが、自己炎症性疾患で炎症性腸疾患を合併することは稀である。CGD患者では、主に細菌や真菌による感染症によって肉芽腫が形成されるため、CGD腸炎においても何らかのトリガーが存在し、腸管の慢性炎症を発症すると推測される。今後、炎症トリガーを明らかにすることで、CGD腸炎の発症予防や治療法の開発につながると考える。また、遺伝子治療を行なったCGD患者では、蛋白発現解析では末梢血中に遺伝子導入細胞を検出することはできなかった。しかし、遺伝子治療で正常な遺伝子を挿入するために用いたベクターやCGDの正常遺伝子(cDNA)は、末梢血中にわずかに検出されたため、生体内では遺伝子導入細胞が残存していると考える。遺伝子治療後、臨床的に慢性炎症の再燃がみられないことから、ROSを産生する細胞が少なくても、臨床的な効果が得られる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度は研究期間3年間の2年目であり、H27年度に樹立した細胞、患者細胞を用いて細胞機能解析を行なった。CGDの慢性炎症が単球やマクロファージの機能異常に関連するとの仮説に基づき、研究を継続している。これまでのin vitroのデータとCGD患者の臨床所見の解析では、この仮説を支持する結果が得られている。そのため、研究の方向性を修正する必要はないと判断した。H29年度も、当初の計画通り研究を進めるが、遺伝子治療患者で遺伝子導入細胞が検出困難だったことから、機能解析を行うことができない。しかし、遺伝子治療後、慢性炎症など臨床経過の詳細な検討を行うことで、遺伝子導入細胞の臨床的効果を評価していく。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度までの研究結果に基づき、CGD患者および遺伝子変異導入細胞株などを用いて、CGDで慢性炎症をきたすメカニズムを検討する。これまでの検討から、NADPHオキシダーゼ由来のROSは、殺菌作用以外に炎症シグナルの制御に関与することが明らかになった。細胞内でミトコンドリアから産生されるROSと作用機序が異なる可能性があるため、細胞の走化性など炎症との関連が示唆される細胞機能を網羅的な解析を行う。また、遺伝子治療患者で遺伝子導入細胞が検出困難だったことから、機能解析を行うことができない。しかし、遺伝子治療後、慢性炎症など臨床経過の詳細な検討を行うことで、遺伝子導入細胞の臨床的効果が評価可能と考える。そこで、遺伝子治療を行なったCGD患者の臨床的評価と末梢血や骨髄細胞の解析を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度の患者検体数が予定よりも少なかったため、細胞機能解析に必要な特殊な細胞培地をH29年度に追加で購入することになったため。培地の使用期限が限られているため、H28年度には購入しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞機能解析で用いる特殊な細胞培地を購入する予定。
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