研究課題
当初の計画であったがん化学療法を受けた患者末梢血のgammaH2AXを用いた治療関連合併症のバイオマーカーの樹立が技術的に困難であったため、やや方向性を変更し治療効果およびがん易発症素因に関連する臨床的なバイオマーカーの発見を視野に入れた研究を推進していった。具体的には家族性腫瘍等のがん易発症素因をもつ患者を対象にした臨床研究とした。家族性腫瘍の原因遺伝子はそのほとんどがDNA損傷修復に関わる遺伝子であり、生殖細胞系列にそれらの変異を持つことが家族性腫瘍の特徴である。これに関してはまず遺伝学的検査を行い、DNA損傷修復や細胞周期に関わる遺伝子に変異が同定された家族性腫瘍の患者とそうでない患者と比べて違いがあったかどうかの後方視的な検討を行った。小児がん患者は遺伝学的バックグランドを持つ場合が多いため、小児がんの発症、再発、2次がん発症に関わる臨床的バイオマーカーを見出していった。研究者は遺伝カウンセリングにも従事しているので、患者家族にどのように遺伝性腫瘍の遺伝情報を提供し、患者家族の健康管理にいかに活用するかという視点からの研究も取り入れた。最終的には小児がんの治療成績の向上、さらに長期にわたる健康管理の向上、につなげることが最も重要であると考えており、この目的のために網膜芽細胞腫をモデルとしてRB1の遺伝学的検査による再発リスク層別化とサーベイランスを研究の中心にして推進した。本邦では今まで一般的には行われていなかった片眼性網膜芽細胞腫の遺伝学的検査を実臨床に導入し、個々の患者の再発(三側性網膜芽細胞腫)リスクを層別化し、それぞれの再発リスクに応じたフォローアップを提供することを実用化した。具体的には三側性網膜芽細胞腫のサーベイランス検査である全脳MRIの適応決定に遺伝学的層別化を導入した。
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Sci Rep.
巻: 8 ページ: 6956
10.1038/s41598-018-25260-8.