研究課題
ミトコンドリア心筋症の診断法の確立にむけて、H27年度は動物実験およびヒトのミトコンドリア心筋症におけるイメージング評価系の確立を行った。まずモデル病態動物におけるイメージング評価系において下記の項目について評価を行った。1.心ミトコンドリア毒性を有する抗がん剤ドキソルビシンを投与したミトコンドリア心筋症マウスモデルを作製し、有意な生存率の低下を確認した。2.モデルマウスの心臓生組織切片を作成し、心筋症組織の蛍光顕微鏡観察を、アポトーシスと酸化ストレスレベルに着目して行い、コントロールと比較して有意な変化を認めた。3.上記組織について膜電位依存性蛍光試薬を用いてMt膜電位測定を行ったところ、膜電位の低下を認めた。ミトコンドリア病またはミトコンドリア病以外の肥大型心筋症症例において心筋生検検体を用いた呼吸鎖酵素活性測定および電子顕微鏡による超微形態観察を行い、以下の結果を認めた。1.ミトコンドリア心筋症の超微形態は他の肥大型心筋症と比べて数、サイズ、クリスタ形態に明らかな相違を認めた。2.ミトコンドリア心筋症では呼吸鎖酵素複合体活性の単数、複数の低下を認めた。以上よりミトコンドリア心筋症の確定診断において呼吸鎖酵素複合体の酵素活性および電子顕微鏡像によるミトコンドリア形態観察は必須条件であることを確信した。動物実験におけるイメージング評価系は臨床においては心筋症のミトコンドリア機能評価系にも応用でき、今後特殊診断システムへの発展も期待できる。
1: 当初の計画以上に進展している
ここまでに示した内容はH27年度に計画した全ての研究内容が網羅されており、研究の目標を達成するための、多くの成果を得ることができた。さらに、当初予定にはなかった、モデルマウス実験に留まらず、マウス細胞レベルの実験まで行い、組織レベルのみならず細胞レベルでの変化をつぶさに観察し定量することができた。ヒトミトコンドリア心筋症の診断システムにおいてはすでに生化学(機能)と超微形態を軸とした診断法によって確定診断が可能であることを確立した。以上より現在までの達成度は『当初の計画以上に進展している』と判断している。
平成28年度は、『ヒトにおけるイメージング評価法の確立』に着手し,平成27年度に作り上げた評価系をヒトでの検体に応用する。下記に記載した計画で研究を進める予定である。①患者由来の心臓組織切片を作成し、分子生物学的手法や蛍光顕微鏡、電子顕微鏡によるイメージング法により、Mt膜電位測定、呼吸鎖酵素活性、mtDNA の変異頻度を評価する。②患者由来初代培養繊維芽細胞を用いて、顕微鏡イメージングによりミトコンドリア形態と機能を評価する。
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