研究実績の概要 |
川崎病モデルマウスを用いて、川崎病血管炎における自然免疫系、特にTLR(Toll様受容体:Toll -like receptors)の果たす役割を検討する目的で研究を開始した。当初の予定通り、野生型マウスに対してCAWS(Candida albicans water soluble fraction)を投与することにより、血管炎モデルを惹起することに成功した。このモデルを用いて、TLR2, TLR4, TLR9欠損マウスに対して同様のCAWS投与を行った結果、血管炎を惹起することは可能であったが、その程度は野生型マウスと同程度であった。そのため、本モデルにおけるTLRの果たす役割は小さいことも想定された。
その後、同様のマウスを用いて検討を繰り返したもののやはり、野生型との間には統計学的 に有意な差は認められなかった。また、異なる自然免疫系として、NLR系の一つであるNLRP inflammasomeの関与が影響していることも考慮し、NLRP3欠損マウスを入手し、同様にCAWSを投与する実験を行った。しかし、これも同様に野生型マウスとの間に、血管炎の程度に有意な差は認められなかった。そこで、川崎病患者の急性期サイトカインデータを再度見直し、臨床的知見からin vivoでの検討に手がかりが得られないかどうかを再度検討した。しかし自然免疫系のサイトカインであるHMGB1などと川崎病の治療不応例あるいは巨大冠動脈瘤の形成との明確な関連は指摘することができなかった。そこで、残念ながら、自然免疫系特にTLRが川崎病血管炎において果たす役割を明確に示すことは、今回の検討ではできなかった。
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