研究課題
前年度に引き続き、Dent病、Lowe症候群の家系を集積し、遺伝子解析を行った。一部はエクソーム解析を施行した。Dent病の7家系9例にCLCN5遺伝子異常を、1家系1例にOCRL異常を認めた。Lowe症候群の8家系8例にOCRL異常を認め、Lowe症候群とDent病(Dent-2)の中間的な症候を呈する3家系4例でもOCRL異常を認めた。Dent病のうち、くる病を呈する例ではOCRL異常を有し、またLowe症候群との中間的な症候を呈する例(白内障や精神発達遅滞を有する例)ではOCRL異常を有していた。また、特発性Fanconi症候群(iFS)の1例で、エクソーム解析を行ったところ、シスチン症の責任遺伝子であるCTNS遺伝子にコンパウンドヘテロの変異を認め、同症であると診断した。また、尿細管性蛋白尿を呈する遺伝性疾患の全国調査を行った。一次調査(患者診療の有無)の回収率は49.0%、二次調査(臨床情報調査)の回収率は65.8%であった。全国の推計患者数はDent病280人、Lowe症候群161人、iFS 43人、シスチン症8人であった。二次調査で回答のあった症例数はDent病90人(84家系)、Lowe症候群57人(52家系)、iFS 11人、シスチン症1人であった。Dent病では尿β2MG高値は100%(1万μg/L以上が92%)、高Ca尿症は48.8%、腎石灰化は37.9%、尿路結石は9.3%に認めた。全例30代以下で、CKDステージ≧3は2人のみであった。Lowe症候群では尿β2MG高値、白内障、精神発達遅滞を100%認め(尿β2MG 1万μg/L以上は90.5%)、30~40歳代で末期腎不全に至っていた。Dent病、Lowe症候群とも38%の家系で遺伝子解析が施行され、既知の遺伝子変異の検出率は既報と同等であった。
2: おおむね順調に進展している
遺伝性尿細管疾患の遺伝子解析を進めることができた。また、臨床像を集積し、わが国のDent病患者では腎機能低下が緩徐であることが示された点、Lowe症候群では30~40歳台で末期腎不全に至る傾向が示されたという点などにおいて、より詳細な臨床像が明らかにされた。さらに、遺伝子解析と臨床像の解析を行い、Dent病のうちOCRL異常を呈する例(Dent-2)の特徴の一部が明らかにされた。
さらに遺伝性尿細管疾患の家系を集積する。Dent病においては、特に中高年者をターゲットとし、遺伝子解析を進め、本邦における長期の腎予後の解明をめざす。また、CLCN5とOCRLのいずれにも変異を認めない症例を集積し、エクソーム解析を行い、新規疾患関連遺伝子の検出を試みる。同様に、Lowe症候群においても、OCRL遺伝子に変異を認めなかった症例を集積し、エクソーム解析を通じて新規疾患関連遺伝子の探索を行う。中高年の患者をさらに集積し、より詳細な長期の腎予後を明らかにする。
次年度も遺伝子解析および臨床像との関連性の解析を行うため。
引き続きDent病、Lowe症候群、Fanconi症候群、遠位尿細管性アシドーシスなど遺伝性尿細管疾患の遺伝子解析を行う。一部はエクソーム解析を行い、新規疾患関連遺伝子の探索にあてる。また、成果を学会および論文にて発表する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
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