研究課題
一次性遠位尿細管性アシドーシス(distal renal tubular acidosis; RTA)は希少な遺伝性尿細管異常症であり、本邦患者の詳細な臨床遺伝学的検討はされていない。本研究と並行して行われた全国調査にて集積された一次性遠位尿細管性アシドーシスの21家系26例を対象として、サンガーシークエンス、定量PCR、エクソーム解析による遺伝子解析(一部IRUDで解析)および臨床的検討を行った。遺伝子変異を11家系(52%)に認め、内訳は常染色体劣性型のATP6V1B1変異2家系(9.5%)、ATP6V0A4変異5家系(24%)、同優性型のSLC4A1変異4家系(19%)であった。前2者は全例乳児期発症で、SLC4A1変異は中央値2.5歳 (四分位1.3-4.4歳)で発症していた。初発症状は18例(69%)が体重増加不良であった。全例アルカリ治療が行われ、発症時と最終観察時において身長は-1.35SDから-0.65SDへ有意に改善した(p=0.016)。最終観察時年齢の中央値は13歳 (四分位4.7-39歳)で、CKDステージ2~5を9例(41%)に認めた。既報では一次性dRTAの7~8割に遺伝子変異を認めるが、本邦ではその割合が低く、他の遺伝子異常の検索が必須である。幼児期以降の発症ではSLC4A1異常が第一候補となる。長期的にはCKDへの進行割合が高く、慎重なフォローを要する。
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