研究課題/領域番号 |
15K09687
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 太一 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (20422777)
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研究分担者 |
深澤 佳絵 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (00612764)
早野 聡 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (70747849)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 慢性肺疾患 / EGF |
研究実績の概要 |
本研究では、ラット新生仔に対する高酸素負荷慢性肺疾患モデルを用いて、EGFが肺胞増殖を促進するのか、さらにEGFによる肺胞増殖を先行させた上での、慢性肺疾患に合併する肺高血圧に対する治療が、肺高血圧治療単独と比較してより有効かを検証することを目的としている。本年度は、高酸素負荷慢性肺疾患モデルにおける病変形成を検討するために、高濃度酸素負荷の日数による肺病変の変化を検証している。我々の先行研究で日齢0からの28日間の高濃度酸素負荷は、著明な右室肥大を呈した一方で、死亡率も高かった。また、14日間の高濃度酸素負荷では肺病変形成が認められることから、さらに短い7日間の高濃度酸素負荷での肺病変および肺血管病変について検討した。日齢0より高濃度酸素負荷を加えた群(以下H群)と与えなかった群(以下C群)を、日齢7に屠殺し、肺および心臓組織を得た。H群、C群において、右室肥大の評価を行い、得られた肺組織に対して、ヘマトキシリンエオジン染色、エラスチカワンギーソン染色にて肺胞構造及び肺血管のmorphometryを行った。これらの結果、H群はC群に比較して、わずかに右室肥大、肺血管の中膜肥厚の傾向があったが、有意差は得られなかった。肺血管の中膜肥厚については平滑筋アクチンの染色でも確認したが、同様の傾向だった。また、明らかな肺胞構造の差異も両群間で認めなかった。さらに、マクロファージの浸潤についても免疫染色にて検討したが、H群はC群より、やや血管周囲マクロファージが多い傾向があったものの、有意差は得られなかった。この検討では、日齢7までの高濃度酸素負荷では明らかな初期病変はできていない可能性が高いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、ラット新生仔に対する高酸素負荷慢性肺疾患モデルを用いて、EGFが肺胞増殖を促進するのか、さらにEGFによる肺胞増殖を先行させた上での肺高血圧治療が、肺高血圧治療単独と比較してより有効かを検証することを目的としている。本年度は、高酸素負荷慢性肺疾患モデルにおける病変形成を検討するために、高濃度酸素負荷の日数による肺病変の変化を検証した。7日間の高濃度酸素負荷終了時点での肺病変および肺血管病変の詳細な検討はこれまでほとんどなく、今後の慢性肺疾患モデルの研究に資すると考えられた。一方で、日齢7のラットの場合、これまでの手法での右室圧測定は困難であり、正確な肺循環の検討には、測定方法の再検討が必要と思われた。また、日齢14及び21の肺病変および肺血管病変の詳細な検討によって、高濃度酸素投与による肺病変および肺血管病変の形成の全体像を明らかにする必要がある。また、高濃度酸素投与を行ったラット肺における肺胞増殖関連因子の経時的な発現解析も、肺胞構造異常などの肺病変形成のメカニズムを解明するのにあたり、今後必要である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討で、7日間の高濃度酸素負荷終了時点での肺病変および肺血管病変の形成は、明らかなものは認めなかったため、当初の予定通り、EGF治療モデルの評価においては、高濃度酸素負荷期間は14日間で行う予定としている。具体的には、EGFを高酸素負荷中14日間連日腹腔内投与したEGF治療群、生理食塩水を同期間投与した慢性肺疾患モデルラット群(EGF非治療群)、あるいは高酸素負荷をせず、生理食塩水を同期間投与した群(コントロール群)の3群を作成し、肺胞数を含めたmorphometryと肺高血圧、右室肥大の評価を行い、効果を確認する予定である。また、3群における肺胞増殖関連因子の発現解析も行う。これらに先行して、高濃度酸素負荷期間を21日間としたラット肺についても肺病変、肺血管病変を検討するが、死亡率が14日間のモデルよりも上昇することが予想される。ただし、病変の形成が高度で死亡率がそれほど高くない場合は、上記のEGF治療群を含めた3群の比較において、効果の差がより明らかになる可能性があり、その場合は、高濃度酸素負荷21日間で3群の比較検討を行うことも想定している。
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