研究課題
1.日本人患者における遺伝性尿細管機能異常症における網羅的診断体制の確立:私たちは遺伝性尿細管機能異常症原因遺伝子として報告されている、バーター症候群、ギッテルマン症候群、尿細管性アシドーシス、デント病、遺伝性低マグネシウム血症、ファンコニ症候群、シスチン症など、すべての遺伝子の解析を行うことが可能なパネルを作成し、網羅的診断体制を確立した。それによりm2016年度には、バーター症候群・ギッテルマン症候群で57家系、尿細管性アシドーシス4家系、デント病24家系、遺伝性低マグネシウム血症4家系において遺伝子診断を行った。現在も5-10検体/月の解析依頼を受けるに至り、日本国内唯一の網羅的診断を行う施設として認識されるに至っている。2.遺伝性低マグネシウム血症の診断フローチャートの作成:遺伝性低マグネシウム血症はその責任遺伝子がすでに10以上同定されている。それぞれ、難聴、眼合併症、低カルシウム尿症、クル病などを伴う可能性が有り、正確な臨床診断を必要とする疾患である。私たちは、経験を元に診断フローチャートの作成を行い、臨床における有効性を証明するとともに、網羅的診断体制を確立し成果を得ている(Clin Exp Nephrol. 2017 Epub ahead of printing)。3.ギッテルマン症候群における、イントロン内変異新規同定法の開発:ギッテルマン症候群においては常染色体劣性遺伝性疾患にもかかわらず、30%程度ではヘテロ接合体変異しか同定されないことが報告されてきた。そのため正確な遺伝子診断ができないことが大きな問題であった。私たちは次世代シークエンサーを用い、イントロン内もスクリーニングを行い、検出された変異がスプライシングに影響を与えるかにつき、網羅的に解析するシステムを構築した(J Hum Genet. 2017 Feb;62(2):335-337)。
2: おおむね順調に進展している
次世代シークエンサーを用いた網羅的診断体制の導入により、遺伝性尿細管機能異常症の病態解明が大きく前進した。特に遺伝性低マグネシウム血症の診断フローチャートを世界に先駆けて発表し、本疾患の診断方法に開発を行った。さらに、ギッテルマン症候群の診断において、イントロン内変異を同定する方法を開発した。これらの成果により、遺伝性尿細管機能異常症の病態解明に大きく貢献した。
これまでの診断体制において収集した検体において、明らかに遺伝性尿細管機能異常症にも関わらず、その責任遺伝子の同定ができなかった症例を多数経験している。それらの検体を用いて、Whole Exome Sequenceによる新規責任遺伝子の同定を行う予定である。また、かつてない規模の遺伝情報および臨床情報が集積されてきたため、それらを分析し、新たな論文報告を行う予定である。
購入予定試薬の納品が年度内に間に合わなかったため。
遺伝子診断用試薬の購入に用いる予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件)
Clinical and Experimental Nephrology
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