研究実績の概要 |
ロタウイルスは急性胃腸炎の主要な原因ウイルスであり、小児の急性胃腸炎による入院の約40%を占める。わが国では2011年にワクチンが承認されたが、2012年以降、これまでに報告された事のない遺伝子再集合体(リアソータント)の報告が相次ぎ、ワクチン接種が野生株の遺伝子変化に与える影響も示唆されている。2014年北海道で稀なG8遺伝子型ロタウイルスの流行を経験した。 H27年度の解析にて、G8P[8]は苫小牧市で50.0%(42/84)、浦河町で55.0%(11/20)、室蘭市で17.6%(3/17)、札幌市で6.9%(2/29)と検出率に大きな地域差を認め、全11遺伝子型はG8-P[8]-I2-R2-C2-M2-A2-N2-T2-E2-H2で株間の相同性は99.6%以上と高く保存されていた。 本年度の解析により、G8P[8]と非G8P[8]の臨床像の比較において、年齢・性別・ワクチン接種率・下痢や嘔吐の頻度・入院率などに有意差を認めず、病原性が増したためにG8遺伝子型が流行したとは考えにくかった。今回のG8P[8]株は全11遺伝子分節を通じて、ベトナムやタイより2014年に分離された株と99%以上の非常に高い塩基相同性を示した。また、これらの株の7遺伝子分節(VP2-4, VP6, NSP1, NSP3, NSP5)は、2012年以降に日本やアジアで報告が相次いでいる遺伝子再集合体(DS-1-like G1P[8])と相同性が高く、他の4分節(VP1, VP7, NSP2, NSP4)は日本国内の分離株とは異なり、アジアのウシなど偶蹄類の株との相同性が高かったため、今回の流行株は日本国外で複数回の遺伝子組換えが起こり、最近日本に持ち込まれたと考えられた。
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