研究課題
IgA腎症は、小児、成人において最も頻度の高い慢性糸球体腎炎であり、腎不全の主要原因である。現在、その診断には腎生検による病理組織学的診断を待たなければならず、より非侵襲的で疾患特異的なバイオマーカーが求められている。尿は非侵襲的に採取できることから、尿バイオマーカーを用いた慢性糸球体腎炎の診断や病勢の予想ができると臨床的に非常に有用である。従来からの腎疾患を示唆する指標としては、糸球体のろ過機能が破綻した結果として血中から漏出するアルブミン、尿細管再吸収機能が低下した結果として尿中で増加するβ2MG、α1MGなどの低分子蛋白、尿細管障害を示唆する尿細管刷子縁局在酵素NAG等が知られている。これらの加え、新規の尿バイオマーカーが探索され、NGAL、IL-18、KIM-1、L-FABP等が新規バイオマーカー候補として提案され、更に、近年腎臓、尿プロテオーム解析がなされ、腎臓の各部に特異的に由来するとされる蛋白質がリスト化されデータベース化されていることから、それぞれの部位特異的障害のバイオマーカーを選定し、組み合わせて測定することで腎生検と同様にIgA腎症の病理診断をつけ、病勢を把握することを目的として、実際腎生検を行い病理組織像が確定された患者の尿を使用して、他の腎炎患者と比較検討すること、また同じIgA腎症患者の中でも病理像との比較を行うことでIgA腎症における尿バイオマーカーの特徴、また病理所見と尿バイオマーカーの相関を検討した。
3: やや遅れている
IgA腎症ではその他の腎炎と較べて、明らかにL-FABP1 (p<0.01), Megalin (p=0.03), Thy1 (p=0.02) and Cubilin (p<0.01)の発現が低かった。KIM-1の発現が蛋白尿(p=0.01)、血尿(p=0.03)と有意に相関していた。また、半月体形成のあるIgA腎症の患者ではIL-18の発現が有意に高かった。(p=0.03)
近年IgA腎症患者の病態発症、進展に関与する因子として注目を集めているガラクトース欠損型異常IgA1(Galactose-deficient IgA1)の尿中濃度測定を追加する実験を行い、比較検討して更なる精度をあげたい。
初期の倫理審査委員会の承認取得に時間を要し、更に承認以降に検体収集を行わなければならなかったため、時間を要したため、最終年度に集中的に実験を行い、一部の結果を得ることができたが、一部課題が残っているため、その課題遂行のための試薬購入費として次年度使用額が生じ、それらに充てる予定である。
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